紙の本
寒気をさせる才能
2007/02/04 17:19
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:くにたち蟄居日記 - この投稿者のレビュー一覧を見る
筒井康隆の短編集の中でも 本作が一番強烈である。
筒井康隆という稀代の作家は日本でどのような位置づけされているのかとたまに思ってしまう。ブラックユーモアの効いたスラップスティックの名手とでも言って置けばなんとなく「分類」が出来たかのような気がする。しかし 筒井の才能は とてもそんな簡単には定義出来ないのだと思う。
筒井のギャグは本当に笑える。しかし 笑っているうちに寒気がしてくることが多い。それは ギャグに吹き込まれているブラックな部分が効くから というわけではない。
僕の場合には。
僕の場合には 筒井の 途方も無い才能にいい加減寒気がするくらい感動しているからだと思っている。実際 この短編集に集められた諸作は どれを読んでいても 筒井の才能に感嘆するばかりだ。
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「乗り越し駅の刑罰」が大層なトラウマになっているので、筒井康隆を読んだのは実に25年ぶり。
作者の発想力には今回も驚かされた。
ブラックなのは好みだし、狂気も許せるのだけれど。ふと、実は笑いながら読んでいる自分が作者に笑われているんじゃないかと思い、冷や汗が出たりもする。
やっぱり気軽には読めない作者だ。
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筒井康隆の引き出しの多さが遺憾なく発揮されたスバラシイ短編集。
非道徳なお話もありますが、思ったほど酷くはないです。
筒井先生のイカれた話をもっと読みたいなぁ。
探し甲斐がありそうです。
11.07.23
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「経理課長の放送」
「村井長庵」:ある問題が発生したときに、人は根本原因ではなく、根本原因が表出する要因を叩く
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面白可笑しい短編小説集。
笑いにあふれている作品ですが,
かなりブラックユーモアがきいています。
人間の欲,特に日本人の欲について,
外の作家が書きたがらない,本音の本音の部分をガンガン書いておられます。
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筒井康隆ワールドは、まさに奇想天外。7短編それぞれパターンが異なるが、どれもここまで書いていいのかと思うような思わずいやな感じがする愚劣さや悪行を描く。タブーに挑戦して本来表にださない人のもつ悪魔的な面を出した様子を描いている。
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【自殺が自死なんて簡単な言葉になったら】
マイナスな方へグイグイ引っ張られてしまって頭が痛い。筒井さんの話は好きだけれど理解には程遠くて、星さんが読みたくなる。
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短編集だが、今書いたら炎上しそうな話ばかり。全話女を犯す描写あり、若干マッチョイズムも透けて見えるか。話自体のおもしろさはそこそこ、農協のが比較的あたりだった。
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「農協月へ行く」
農協のおかげで宇宙人との第一接触は犠牲者ひとりに収まるし
宇宙に神がいなくたって月に神社ぐらい建つだろう
むかつく
「日本以外全部沈没」
日本以外全部沈没した世界の片隅で
もはや人類に綺麗事いってる余裕はなかった
人間を冒涜している
「経理課長の放送」
全編放送事故
ひどい
「信仰性遅感症」
宗教とは暗示である
ろくでもない
「自殺悲願」
自殺しようとするのに死ねない小説家の話
三島由紀夫の「命売ります」に似ている…しかも美しくない
「ホルモン」
失敗を繰り返しながらもホルモン注射で進化の道を歩む人類の歴史
神を冒涜している
「村井長庵」
勧善懲悪の時代劇
サイコパスの欲張り爺さんが無責任な暴君として島に君臨するが
やりすぎて自滅する
しかしこの世はやったもん勝ちやぞ、ってこのバカ!
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筒井康隆の奇想が炸裂した短編集。すでに読んだのもあるが、やはり表題作の「農協月へ行く」は素晴らしい。特に田舎者の会話がすごくリアルで今読んでも全く古びていないのに驚いてしまった。それ以外にも田舎者特有のノリや下ネタ、親戚の動向を気にする見栄など、細部に至るまで描写は丁寧である。
「信仰性遅感性」は全ての感覚が半日遅れでやってくるという設定を禁欲的なシスターと合わせて意地悪くこねくり回した短篇である。ギャンブル狂いの関西弁のファーザーが実に筒井キャラらしくて非常に良い。ある種の上品さやお行儀の良さなどをあざ笑い、人の本性や下劣な様を眺めて楽しむ悪趣味ぶりが極まっている。
「自殺悲願」は世にも奇妙な物語でも取り上げられた作品だが、非常にスラップスティック。オチのあっけなさも含めて非常にまとまりのいい短篇だろう。「村井長庵」の主人公である長庵もまた筒井キャラらしい欲望の権化で、その肉欲に対する執念はおぞましさを通り越してシュールな笑いを帯びている。犯罪者で逃げ延びているわけなのだが、その強烈なキャラクター性が彼を取り巻く物語の奔流に負けておらず、徹頭徹尾お銀という女を手篭めにできるかどうかにその執念を傾けており、物語がキャラクター個人の欲望に競り負けているのだ。
あとがきで、筒井康隆が自分の小説の世界観を要約した文章が載っているのだが、これがたまらなく素晴らしい。あとがきにある通り、筒井康隆を嫌う人間はその下劣さやあさましさの描写を嫌悪するわけだが、どう否定しようが現実はあさましいもので、そこから出発しないと、奇想天外な飛躍はできず、真実には決してたどり着けない。
ーー人類はみな平等。愛。「わたしは嘘を申しません」。性善説。「戦争はご免だ」。まごころ。先人を敬おう。不幸な人に愛の手を。こういうものはみんな嘘であり、それを嘘と認識したところからドタバタでスラップスティックなハチャメチャSFは始まる。/人間は差別が好きで、肉欲に生きていて、嘘をつかねば生きられず、悪いことばかり考える。戦争は大好きである。平和運動は戦争の第一段階だ。裏切りこそ繁栄につながり、老人を馬鹿にし、早く死ねと思い、不幸なやつがいるため自らは幸福だといって喜ぶのである。この真実を、今やSF以外の文学は、描こうとしない。否、描けない。自らがそうした虚偽の中に取り込まれてしまっているからだ。ただ一つ、下等にして半気ちがいで、嘘つきと思われていて、そして何ものからも自由な、ドタバタ、スラップスティック、ハチャメチャSFのみが、この真実を描き得るのであるーー
あらためて読むことで筒井康隆の毒舌と奇想っぷりに酔いそうになった短編集である。
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有名な「農協月へ行く」がやっと読めた。おもったより大暴れしてないのね。
「村井長庵」もひどくておもしろかった。
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『農協、月へ行く』
最高すぎる。農協のみんなの喋り方、ほんま面白い。こういう人いるわー、今は少なくなったけど、確実にいる。
展開も面白く、農家目線、船長目線、そして政府と変わっていくのもさすが。
オチも最高だった。
『日本以外全部沈没』
小松左京『日本沈没』のタイトルパロディ。
世界中が沈没して、日本と暮らせないような山の山頂など数箇所しか存在しないところから始まる。バーの中には避難してきた様々な要人が。
めちゃくちゃおもろいなぁ。当時だったら臨場感あってさらに笑っただろうなぁ。
『経理課長の放送』
ストライキのおきたラジオ局。課長は役員側だからストライキには参加出来ず、しかも役員では最も立場が低いのでラジオパーソナリティの、代わりを務めることに。むちゃくちゃ。
『信仰性遅感症』
五感で感じるのが、17時間後になる設定。飯を食っても味がやってくるのは翌日。殴られても痛いのは翌日。良い設定だなぁ。食と性以外のパターンも見たかった。舞台を修道院にしたのもさすがとしかいいようがない。
『自殺悲願』
うわーーー。読んでおけばよかった。拙著に同じ、死にたい人が死ねない(助かってしまう)というコンセプトの話がある。場面は全く違うけど。
鴨居のくだり、電車のくだり、笑ったなぁ。そしてオチが最高だったなぁ。最初から決めてたんだろうなぁ。
『ホルモン』
構成、文体が面白いなぁ。新聞の社説のみで構成された小説。
そして、初めの卑猥なシーンから数珠繋ぎにここまで持ってくるとは。たまに現実とリンクさせるのもうまい。笑ってしまう。
『村井長庵』
これまでの、この本の全ての記憶がなくなるほどの極悪ぶり。面白すぎる。悪役を主人公にしたら筒井さんの右に出るものは居ないだろう。
ふつうは、ある事象に選択肢があれば、全てのパターンを出してそこから取捨選択するが、筒井さんは全てのパターンを盛り込んだ。その事象というのが『強姦』だから、バツが悪い。(相手が動物パターンだけ抜けているかな)
これほど、悪趣味な小説は見たことない。そういった意味でも印象に残る。筆力はさすが。
時系列をわざと論理破綻させてるところも面白かった。
こんなに誰かに感想を聞かれたくない小説がほかにあるだろうか。間違いなく令和じゃ出版されてないだろう。
と、調べたら、村井長庵って、ある話なんですね。筒井さん版ってことか。