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今読む1959年アメリカ青春小説ヒット作
2016/01/25 12:26
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投稿者:ががんぼ - この投稿者のレビュー一覧を見る
アメリカ文学には青春小説というジャンルがあると思う。
青春小説なんてどこにでもある、といえばそのとおりなのだが、
とくにアメリカではそれが一つの確固たる物語の在り方として、
伝統的に確立されているように思うのだ。
そうだとすると、それはたぶんアメリカのイノセンスということと関係がある。
たとえばヨーロッパは、長い歴史の中でけっこうドロドロしたものを背負っていて、
それはそれで魅力だと思うのだが、
一方アメリカは、西洋文化の一部と考えると歴史の浅い国で、
その一面として、
ヨーロッパが皮肉な目で斜めに見たり、鼻先で冷笑するようなものを、
熱くまっすぐに見つめようとするものがあるのではないか。
それはいわゆるナイーブな姿勢で、
純粋素朴であると同時に、世間知らずで甘い感覚でもある。
でもそれが人々の心をつかんできた。
フィリップ・ロスの『さようならコロンバス』もそうした伝統の一端を成す小説だと思う。
フィリップ・ロスといえば、全米図書賞2回など数々の名誉ある賞を受賞している重鎮。
ユダヤ系作家として差別やら社会的問題にも積極的に取り組んできた。
作家にとって最初の全米図書賞受賞作であるこの『さようならコロンバス』は、
実に若干20代半ばで書いた作品だそうで、
その若さもあってか相当インパクトがあったらしい。
翻訳は、先ごろ亡くなったアメリカ文学者で文芸評論家の佐伯彰一さんだが、
あとがきからも発表当時の熱が感じられる。
とはいえ、1959年出版で、何しろ半世紀以上も前の物語である。
当然のように翻訳の文体は古いし、
内容的にも若干違和感を覚えた。
ユダヤ系アメリカ人である貧しい語り手と、やはりユダヤ系の富豪の娘との恋と
(題からもうかがえるように)その破局。
あまり正面切って掘り下げられてはいないとはいえ、
背景にはアメリカにおけるユダヤ人の問題や貧富の問題もある。
そもそも当時のアメリカという国の社会や文化が遠い。
その辺は今読む読者にはちょっと戸惑うところでもあると思う。
だいたいインパクトがある青春小説というのは、
どこかで時代の殻を破って、その社会を突き抜けるところがアピールするのだろうと思う。
日本で言えば、これまただいぶ古いが、石原慎太郎の『太陽の季節』とか、
庄司薫の『赤頭巾ちゃん気をつけて』とかがそうだったのではないか。
この『さようならコロンバス』も、もっと同時代的に事情がわかれば、
かなり捻りのある会話や、一見理解し難い行動なども
味わいが深まるということはあるのだろうと思う。
それでも、青春とか恋愛とかいうものには、
おそらくは時代や地域を超えたものがある。
そこにはやはり共感があるし、
何かしらジワジワと切なさも感じる。
遠い時代と国とに思いを馳せながら、
あらためて普遍的とみえるものを味わうのもいいかもしれない。
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映画に「ラブ・ストーリー」のアリ・マッグロウが出ているというので。ニューヨークの高級住宅地に住む女子大生と下町の叔父の家に下宿する貧しい青年の恋。
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現代アメリカ文学の巨匠が送るスタンダード青春小説。
いまから50年以上前の話だけれど、そこに描かれている主人公たちの心の動きや描写は普遍性を持っている。
そして、昔の小説だからこそ感じるのか、そこに書かれた言葉はなんでもないものでも泣けてくる。
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なんとも青臭くて、水々しい青春小説だなぁー。
少年と少女の恋愛を描いた小説なんだけど、主人公のどこか冷静な視点が凄くいい。
少女に対してや自分に対するまなざしが面白いんだけど、ラストはいかんよ?。
あれは男が悪いな。
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思えば、大学1年生の頃、英語の授業で1年間かけて訳した作品の日本語版です。授業を受けながら買ったのか、授業が終わった後、たまたま見かけて買ったのか、記憶が定かではありませんが、とにかく20年も前に読んだストーリーだけに、懐かしさはひとしおです。今日本語で読んでもよく分からないところがあるし、当時の私にはとても難解だったことは何となく覚えています。
それにしても、物語の最初の40ページくらいと、最後の2ページくらいしか読んだ(訳した)記憶がないのはどういうことでしょう(笑)。
ちなみに、原作はGOODBYE, COLUMBUS by Philip Roth 1959.
日本語訳は、昭和52年が初版で、私が持っているのは昭和59年の第8刷です。
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「アメリカ」の「若い男女」の「青春」の「みずみずしさ」や「甘さ」や「苦さ」を描いた「短編小説」として、1950年代の例として文学史に記されるべき典型的な作品。教科書としてはセクシャルな内容を孕むので適さないと思うが、マスターピースとは呼べるかもしれない。ただ個人的にはそこまでニールとブレンダの2人の価値観にノれなかった。ジェネレーションギャップではないと信じたいが、それでもある程度歴史的背景など理解がある読者なら、今読んでも青春小説として申し分ない読後の満足感は得られると考える。それは2021年に『グッバイ、コロンバス』(朝日出版社)として新訳が出版されていることからも明らかだ。
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この時代の雰囲気とか、ユダヤ教の人々の考え方とか、そういうのを理解すればもうちっと分かるんかとは思う。
逆説的に言うなら、まぁさっぱり分からんわけですよ。この男は一体何がしたいのか。いや単に避妊したいだけなのかな。でもってそれが見つかったらもうおしまいだーって、そこまでの話なんだろうか。もしくは単に二人がガキだったということだろうか。
とかなんとか色々と妙な感じなのですよ、この読後感が。
とりあえずユダヤ人の風俗みたいなのが興味深かったなぁ、というわけで歴史書みたいに読めば良いかね。
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いわゆるボーイミーツガールの物語。
おじの家(実際主人公の相手をするのはおばさんだが)に厄介になっている図書館員の青年が、真夏のプールで出会ったリッチな住宅地に住む女子大生に恋をし、付き合っていくうちに彼女の家に招待されるまでになっていく。
彼女のボーイフレンドとして彼女の兄の結婚式にも参加し、次は自分もあるかと考えていたときにある事件が起こり……。
自分のことを彼女がどのように思ってくれているのか良く分からない段階から、徐々に愛情を感じ合う二人の関係性が瑞々しく描かれて、青春の甘さとほろ苦さを久々に味わった。ただ少し不思議に思ったのは、アメリカの状況を良く知らないので何とも言えないが、まだ娘の正式な恋人とも認めていないような男を、何週間も泊めさせてあげるということがあるのかなあということ。
また小説の中では主要登場人物がユダヤ系なので、安息日や教派など宗教に関する話題も出てくるが、前面に取り上げられている訳ではないので、特別な予備知識なく読み進めることはできると思われる。
そのほか、本筋ではないが、図書館にやって来てゴーギャンの画集に熱中する黒人少年に示す心遣いや、彼女のおじのセールスマンが酔いながら彼に話す話など、小説を読む楽しさを味わわせてくれるエピソードもなかなか良い感じだ。
かなり昔に購入だけはしていた本。もう少し感受性が豊かだった時代に読んでおけば良かったかな。
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初フィリップ・ロス作品。
貧しいユダヤ系アメリカ人の青年ニールと同じくユダヤ系だが富豪の娘ブレンダとの恋と破局を描いた作品。
1959年の作品ということで古臭い描写もかなりある。
特にブレンダに女性用避妊器具ペッサリーを付けさせようとするところや、母親に見つかったことで混乱するブレンダを責めるニールのところなんかは今読むとおかしいシーンなのだが、気持ち悪さも感じてしまう。
まあ、それは時代からしてしょうがないのだが。
2人の良くも悪くも純粋な恋愛、若さゆえの衝動や悩みなど普遍的なものもある。
個人的には黒人少年とのやり取りが良かった。同じ階層にいるからこその貧しさ故の思いやりというか、そういうものを感じた。
素晴らしい青春小説ではある。
だが20代前半に読んでたらもっと惹かれたかもしれない。読むのが遅すぎたかな。