紙の本
自由に対する正当な著述書
2020/01/12 18:50
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投稿者:岩波文庫愛好家 - この投稿者のレビュー一覧を見る
自由と言っても種々ありますが、本書では基本的人権や労働者としての日々の生活や選挙や言論・出版や政治面に関する内容が中心となっています。並走する語彙に平等や権利や法律や経済や戦争が出てきます。
これらを絡ませて中身濃く述べられている点には些かの反論もなく、至極ご尤もだと感じます。
特に最終章は戦争について言及されており、本書が書かれた時代背景を色濃く映し出しています。現代の政治家の方々に一読して頂きたい一書です。
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原題:『Liberty in the Modern State』
大学時代の恩師が感銘を受けた人物がハロルド・J・ラスキ。
恩師が感銘を受けた著者:ラスキがどのような著作を残していたのか気になったので、彼の本を読んでみたいと思っていたのだけれども、なかなか手ごろな感じのものが見つかりませんでした。ですが、今年の岩波がこの秋に復刊してくれたので早速購入して読んでみました。
感銘を受けました。大学時代の授業で自由の概念がどう成立したかとか、どれだけの人の苦労や運動の上に、一般市民が獲得したのかなどの話は一通り知ってはいたものの、それが第二次世界大戦を通じてどのように破壊され、自由を奪われていったのかまでを考察した本はなかなかないと思いました。
社会における個人の役割が、自由とどのような関係になるかという漠然とした問いに対して、実社会の事例を、そこまで突き詰めなくても…と思わずにいられない場合にまで話を展開させて説明しています。彼自身の信念がこうした微細な問題群にまで関与しなくては本当に自由というものがそこから錆付いてもろくなってくるからだとの裏づけを持っていることを知り、さらに感銘を受けました。
経済的発展段階が自由が醸成し、維持される条件。平和こそが自由を永続させる条件。などなど、それを複合させていくことでラスキの言う自由を成立させる諸条件というのは整理されますし、現代日本は自由を永続させる条件は整っているとは思うのですが、一定の行動原理を社会的経験から抽出し、それを是とするがゆえに複数の個人や集団に対する一定の規制が施されることで自治が成立し、かえって個人の幸福を増進することにもなるというパラドックスを指摘しているのも洞察の深さ故だと思います。
自由の実現とのその維持には、それを謳歌する人々自身がつねに平等な関心を持ち続けることが重要といっていますが、それを行動に移せるかは広義の意味では含まれますが、自分にはそれができるか自問する良いきっかけになりました。
自由ってぼんやりした概念になりがちだけど、つきつめて考えればやっぱり社会生活の規範をなすものですからね。少しでも関心のある方には読んでいただきたい本です。順番は逆になりますが、次はより研究においては原点と言われるJ・S・ミルの『自由論』を読むことにします。
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原書名:Liberty in the modern state
精神的自由
自由と社会
著者:ハロルド・ラスキ(Laski, Harold Joseph, 1893-1950、イングランド、政治学)
訳者:飯坂良明(1926-2003 、富山県、政治学)