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鎌倉時代に鴨長明によって書かれた「古典日本三大随筆」の一つ『方丈記』の現代語訳版です!
2020/04/09 12:10
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投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、鎌倉時代に活躍した鴨長明による随筆『方丈記』の現代語訳版です。『方丈記』は、「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」の書き出しで知られ、そこに移り行くもののはかなさを語ったことで有名で、『徒然草』や『枕草子』と並んで、「古典日本三大随筆」に数えられる名著です。同書では、鴨長明が隠棲した京都市日野山の方丈の庵において、孤独と寂寥と窮乏に堪え、自己の生涯の帰結をこの庵の生活に求めて、その中に、深い「閑居の気味」を見い出している心情が読者にひしひしと伝わってきます。同書を読まれることで、いつの世にも、現実社会の煩累を越えて自己を深く生かす道を示唆してやまないものがあることが読者に伝えられます。
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このような古典は本来、学生のうちに読んでおくべきで、今更読むのは「恥ずかしい読書」なのかもしれないけど、これは社会人になってから読んで逆に良かったかも。
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文庫本の『方丈記』の訳注書としては、これが決定版だと思う。現在手にすることができる『方丈記』の多くは、この本を含めて大福光寺本を主たる底本にしているのだが、文章の段の分け方は校注者および訳注者によって、それぞれに異なっている。この本の場合は全体を十二の章に分け、各章が古文、現代語訳、注釈、解説という順序で展開する。だから、初心者が手に取って読むことができるのはもちろん、さらに注釈や解説を綿密に読んで理解を深めたいという本格研究のニーズにも堪えることもできる、とても良い本だと思う。
中世文学研究の泰斗である安良岡康作先生による『方丈記』は、何といっても注釈と解説部分にこそ妙味がある。もちろん、現代語訳も優れているのだが、注釈と解説の充実ぶりは群を抜いている。さらに巻末には概説と題した資料的論文と、注釈的補遺と題した論文が付されている。もしも『方丈記』検定のようなものがあったとしたら、この本一冊で高得点を取ることができるであろうと思える。しかし、この本は単に『方丈記』の全体像を捉えるという類のものではなく、将来の『方丈記』研究においても貴重な文献となり得る質の高さを備えた貴重な本である。
2011年3月11日の東日本大震災の後、皮肉にも『方丈記』に記されている元暦2年(1185年)の大地震のことを話題にした記事や文章を目にする機会が増えた。しかし、その多くは元暦2年(1185年)に大地震があったという事実をなぞるだけの記事が多いように感じる。この続きに記されている鴨長明の思いこそが大事なのに、そこに踏み込んだ記事が少ないことが残念に思う。では、続きに何が記されているかを、ここに書き出すことは簡単だが、より深く読んでもらうには、やはり訳注書にあたるのが一番だと思う。
『方丈記』は無常観の文学と称されるが、それだけで終わらないところに面白さがある。時代を経ても受け継がれている古典には、そこに共感を呼ぶものがあり、読み手の心を揺さぶり続けるものがあるからだろう。多くの人々が心に不安を抱く今だからこそ、時が経っても輝きを失わない『方丈記』にふれて、自らの在り方を考える機会になればと思う。
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実際の出来事の記述と、そこから得た感覚や思いの表白のバランスが素晴らしい。隅々からにじみ出る長明の思考が刺激的です。
長明の考え方、人生観がどのように形成されていったのかが垣間見える、という点でもおもしろい作品です。彼のように、豊かかつ冷静な感性で物事を捕らえられるようになりたいと強く思います。
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「行く河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。…」という有名な書き出しで始まる鴨長明の随筆の解説書。
五大災厄(大火、辻風、遷都、飢饉、地震)を「人」と「栖」について叙し、世の無常観を述べている。
現代にも通ずる見解が数多くあり、かつ、想像力を掻き立てる美文で描かれているので、何度も読み返してしまう!
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ドナルドキーン大先生が「日本の文学で,災害のことを記録しているのは方丈記を除いてほとんどない」といっていたので,気になって読んでみた.実質30ページぐらいで,同じ量の現代語訳と,8倍の量の解説がついて,300ページの本になっている.しかし,読んでみると,前半は災害のオンパレード,平家はこのおかげで人々の支持を失い,源氏に追い払われたのではないか,と思えるほどだ(5つの災害のうち一つは平家による人災だけど).鴨長明はやや難しい人で,ヘソを曲げて大原とか日野に引っ込んでしまったみたいだが,完全に煩悩を捨て去ってる訳ではない.それを客観的に自己分析し「自分はまだまだ」と述べているところに文学的な価値があるのではなかろうか.だって,欲が全くないって,それは単なる聖典だ.
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日本三大随筆の一つとされる、鴨長明の作品。
「ゆく河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」という、無常観を表した冒頭の文は、有名。
出家・遁世した長明が、これまでに経験した災厄と、現在の自分の閑居の生活から思う仏の教えを綴っている。
災厄として描かれた、大火、竜巻、飢饉、地震の描写は、どれも凄まじい。
特に飢饉の段は、今の日本ではまず起こりえない凄惨な状況が描かれていて、古文といえど読むのが苦しいほどだった。
このような状態のときに、源平の合戦が各地で行われていたということは、如何に庶民と貴族、そして武士との隔たりがあったかを感じずにはいられない。「平家物語」には描写されない世界が、ここにはあった。
文章は簡潔で、流れがあり、とても美しい。意味が分からなくても、とにかく原文を読むといい。
講談社学術文庫の「方丈記」はくどい程に解説があるので、くわし~く内容を読み解きたい人には向いているかも。
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本文を十二の章にわけ、それぞれの章毎に、①原文、②現代語訳、③注釈、④解説、という流れで書かれている。注釈と解説はとても精緻であり、古語の意味や時代背景などにも及んでいる。
「方丈記」の入門書としては大変優れているのではないだろうか。
最後に「方丈記」に対しての一括した概説がある。これを読むと鴨長明が世を逃れ遁世者となって「方丈記」を著した心持ちが多少わかる気がする。
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注釈と解説は飛ばし読みで読み進める。
毎日新聞の日曜書評の3.11一周年で関連本を特集していたが、その中で中村桂子が『方丈記』を取り上げていた。他が「フクシマ」系の本ばかりだったので目立っていた。ただ、古来より地震ほかの自然災害が多い日本列島だが、それを真正面から取り上げた文学作品は意外となくて、『方丈記』はそうした点で稀有な存在らしい。
冒頭のかの有名な「行く川の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず。」のフレーズに始まり、長明が経験した災害(人災含む)の数々を描写し、その後に自身の遁世生活について綴り、最後に執心から脱することのできない己の心を省みて終わる。
長明が出家した契機は、求道者としての前向きな探求のためではなく、希望の職につけなかった失望からであるらしい。なんだかひがみっぽい感じすらする。本文にも、妻子もないし、自分の乏しい運を自覚して出家したような記述がある。だが、そんな人間の思い悩みがストレートに反映されているからこそ文学作品としての魅力があるのかも。災害の描写にしても、遁世生活の描写にしても、実体験を具体的に書いているので読むものに響きやすい。
訳註者によると、長明はどこかに土地を持っていてそこからのあがりで食っていたのだろうという。たしかに実際的な生活の苦労は描かれないし、経済的には豪奢ではなくても、欲を言わなければ優雅な生活だったのだろう。でないと、こんなもの書けないだろうし。
訳、註、解説が大量についている。いかにも昔の学者先生の文章で、「訓詁学ってこういうことか」と思うが、古典を読むにはあったほうが良い。
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(東日本大震災直後の感想)
「身ひとつ」
毎日、毎日不安になってくる深刻な状態に読書どころではない
けれども
フランス人である作者が日本の禅の庭に惹かれてインスピレーションを得たという『シンプルに生きる』(ドミニック・ローホー)を読んでしまって腹が立った。
何も新しいことはない中身の薄い本だった。なんでこれを日本語に翻訳したんだ!フランスやヨーロッパでベストセラーでになってればいいじゃないか!とやつあたり。
重版になってるから日本人がいかにおフランスに弱いかということを露呈している。買ったわたしもバカだった。
それで思いついて
究極のシンプル術の『方丈記』を取り出して読んだ。
行く河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず、よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、ひさしくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし。
とここまでは暗記するほど知っていたがその先がすごかった。
大火事災害に台風の被害、飢饉、そして地震災害にみまわれ右往左往する、こんな暮らしにくい世の中で物欲名誉欲の煩悩に翻弄されているあわれなひとびと。自分とて他人を羨み、他人から自由になりたく、情に流されれば立ち行かなくなり、世間の習慣に従わないと変人あつかいされる。いったいどうしたらいいのだろう。
特におおなゐ(大地震)の描写は印象深く読んでしまった。おおむかしとちっとも変わらない。天災は繰り返すのだ。
そしておちぶれた鴨長明は「身ひとつ」になり、心の不安をおさめ自らの救い求めとり戻すために、方丈の小屋に暮らしその愉しさゆたかさを語る、というのがこの『方丈記』
文庫本30ページ、短いし古文といえどもわかり易い。なんだか、なんだかとても参考になった。
大事なものは自分が持ち運びできるものだけだったのだ。
*****
あれから10年近く経つ、「身ひとつ」には程遠いけれども、日々工夫をしてシンプルに暮らしている。
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目次
まえがき
凡例
一 行く川の流れは絶えずして
二 予、ものの心を知れりより
三 また、治承四年卯月のころ
四 また、治承四年水無月のころ
五 また、養和のころとか、久しくなりて
六 また、同じころかとよ、おびたたしく大地震なる事
七 すべて、世の中のありにくく
八 わが身、父方の祖母の家を伝へて
九 いま、日野山の奥に跡を隠して後
十 おほかた、この所に住み始めし時は
十一 それ、三界は、ただ、心一つなり
十二 そもそも、一期の月影傾きて
『方丈記』概説
一 鴨長明
二 『方丈記』の構造
三 『方丈記』の価値
四 『方丈記』の文芸史的意義
『方丈記』末尾の注釈補遺
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あまりにも有名な冒頭文ですが、年齢を重ね嫌なニュースを聞くたびに、沁みてくるものを感じます。五大災厄が源平の争乱と並行していたことを思うたび、為政者の無責任のどうにもならなさがやりきれません。
本文に振り仮名付き、現代語訳、注釈、解説付き、至れり尽くせりの本です。鴨長明の、「方丈記」に書かなかった部分に手が届いています。