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「こころはどこから来て、どこにいくのか」という別の本のp49で河合俊雄さんが、「こころのオープンシステムとクローズドシステム」という題目でエレンべガーに関して、こんなことを述べています。
『個人という考え方ができて初めて心理療法が成立し、外にあったこころは個人の中に位置づけられることになります。それが無意識という考え方の誕生の前提条件です。
1900年にフロイトの「夢判断』が書かれましたが、19世紀後半に、さまざまな学問分野で「無意識」という概念が使われます。生理学、生物学、色々な分野で、「こんな分野で無意識という言葉を使っていいのか」と驚くぐらいに使われているのです。 悪霊や精霊などの形で外にあったものが個人のこころの内に位置づけられるにともない、「無意識」という概念が重要になってきたのだと考えられます。同じようにして、現代において当時の「無意識」に代わるような万能的なキーワードが何かと考えてみると、それは「脳」ではないでしょうか。 』
これでいくと、
「無意識の発見」ではなく「脳の発見」という感じの本を、今度は読んでいかないといけないんでしょうね。
私は、河合隼雄さんの推薦する本なので、「無意識の発見 上・下」を読みましたが、この本は純粋な「教養本」としては良書でも、一般の人、生活や仕事での実践的な「教養本」としては失格だと思う。西洋史に興味のない日本人には特に。
もし、エレンベルガーが2007年までの力動精神医学発達史を書いたなら、河合隼雄さんをどう描いていたか?その思想の背景として日本の風土をどう描いただろうか?
そんな本が、そろそろ、日本人の手で出版されてもいい時期に来ていると思う。