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紙の本

一年間の大河小説

2010/03/03 23:39

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る

敗戦の衝撃で日本人たちが呆然としている中、これぞ金儲けのチャンスと考えた男がいた。軍事物資の横流しを手始めに、かつての上官や、喰い詰めた大学生をブレインにして、物資の売買で大きな利益を上げ、そこで大きな商売のターゲットとしてGHQに目をつける。GHQに取り入れば、いろいろなことがフリーパスで行える。日本の役人など目ではない。その上、GHQによる需要は、米軍住宅や、慰安施設の建設、運営など、とにかくビッグビジネスのタネなのだ。
それと並行して、占領軍の一人として進駐した日系士官の視点を通して、GHQを始めとするアメリカ人たちの差別意識、不公正さ、組織上の限界や矛盾が描き出される。そこに、GHQを利用してのし上がろうとする没落華族夫人も登場。占領を従順に受け入れたかに見える日本とアメリカの、水面下での凌ぎ合いの境界線上にいる人々は、いつしか利害関係の中で共闘するような形で出会っていき、財閥解体を巡るさらに大きな時代のうねりにも巻き込まれていく。
といってこれは実録小説というわけではない。財閥の名前は実名だし、このためにGHQと交渉する人物についたあだ名が「ミスター・ホワイ」というのは最近注目された白州次郎がモデルかと思ったりするが、あえてノンフィクションの形をとらずに軟派な小説仕立てにするのがいつもの梶山流。そうすることで庶民の本音、表では出しにくかった欲求や疑問に率直に応えることができ、強い印象を残すのだろう。政治も経済も素人でありながら本国のなんとか委員会の方針を忠実に実行して成果を上げて、一刻も早く帰国したい将校たち、もちろん彼らは政策の妥当性も辻褄の合わなさも、その結果日本がどうなろうと知ったことではなく、日本側の抵抗は出世の妨げでしかない。あるいは大統領選に出ようとしているが思うにまかせないマッカーサー。戦前の日本商社の海外展開力をどうしても削ぎとりたい経済界。いくらかの小銭を稼いだり、その日の欲求を晴らすことで頭がいっぱいの軍人たち。それらの圧力に抵抗できずになすがままの政府、官僚と、自分たちの力で築いたものを必死で守ろうとする民間人たち。うまく立ち回って大儲けを果たす人々。
人物たちの主張や配置は単純化されているかもしれないが、複雑怪奇な迷宮のような戦後社会を大きく俯瞰した、日本人の物語になっている。一人一人では如何ともできなかった占領軍の横暴に、彼らの弱みを突いた痛快な活躍には溜飲が下がる。
そうしている中にも、わずか1年あまりの中で日本社会では新しい生活と産業が立上がっていく気配を漂わせ始める。政治的な主張や裏話の暴露といった方向性にも重点はあるが、それと同時に、占領軍兵士の暴力にもインチキ政策にもめげずに社会の大転換を遂げる日本人たちの力強さが強く訴えかけられているような、1975年作品。河盛好蔵はこれを読んで「梶山さん、あなたは、大デュマです」と言ったのだそうです。

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