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藤原定歌が掛詞的な共通語の関連で縦横10首を並べた絵織物として100首を並べたことを立証するという著者の意気込みが凄い。重ね言葉、共通のキーワード最上段10首の風、縦10首の月、左端列の逢ふ、そして横の思ふを軸の柱として、残りのスペースにジグソーパズルまたはルービックキューブのように100首を当てはめていく。右下は定家、左下は後鳥羽院、そして右上2つ目、左上2つ目には式子内親王、順徳院の歌。全体の構図が後鳥羽の愛した水無瀬の四季の景観が浮かび上がってくる。そして後鳥羽、式子内の代表歌、「見渡せば山もと霞む水無瀬川夕は秋となに思ひけむ」「ながめつるけふは昔になりぬとも軒端の梅よ我を忘るな」とそれぞれに対する定家の返答歌「見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮」「我のみやのちのも忍ばむ梅の花にほふ軒端の春の夜の月」が埋め込まれている!100枚全体が一つの藝術作品として定家が主張していた!定家がそこまで意識して100枚を選んだことは確かなのだろうが、正しい答えは他にあるのかも知れない、とやや無理な繋がりを感じてしまった。しかし、大きなロマンを感じる。定家と後鳥羽の愛憎入り組んだ関係の描写が詳しい。