紙の本
大衆の視点で見た維新
2005/02/01 23:00
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:八ヶ岳ペンション亭主 - この投稿者のレビュー一覧を見る
池波作品と言えば、『鬼平犯科帳』『剣客商売』『藤枝梅安』の3シリーズが即座に出てくるだろう。これに『真田太平記』を加えた4部作は池波氏を語る上でなくてはならないものだ。その代表作の影で、ひときわ異彩を放つ作品と言えば、私はこの『その男』と『男の秘図』、そして『男振り』を揚げる。
本書『その男』は幕末物ではあるが、主人公は決して著名人ではない。しかし、その存在感は登場する西郷隆盛や桐野利明に決してひけを取らない。むしろ大きな時代の転換期で翻弄されながらもたくましく生きようとする、大衆の代表のように雄々しく生き抜く。
池波氏の他作品の主人公、たとえば鬼平こと長谷川平蔵もそうだが、その多くは複雑な家庭環境で己の道を必死に見いだす者が多い。決して幸福とは言えない幼少期・青年期を持ち前の根性と、陰で励ます人情厚いのおかげでたくましい人間へと育つ。本書の主人公も同じである。他の作品とも似通った設定はあるが、決して同一ではなく。それぞれの個性がキャラクターの中で確立している。
詳細は読んでのお楽しみだが、読後に爽快感に浸ることができることを保証しよう。
電子書籍
幕末好きならぜひ
2017/09/12 15:01
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投稿者:mio - この投稿者のレビュー一覧を見る
史実と小説を織りませて書かれた超大作です
不遇な生い立ちの主人公が動乱の幕末~明治を生き抜く、涙あり、人情あり、
大物との絡みあり。
池波先生の渾身の一作ではないでしょうか
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幕末/維新の頃の激動の日本を生き抜き明治まで生きた剣豪の話。史実がフィクションで肉付けされし名作。それにしても人ひとりが生きるくらいの100年足らずのうちに、これほど生きる世界が変わってしまったということは今更ながらすさまじいことです。教科書や授業で上っ面のことは知っていたようなつもりでも、例えば<その男>杉虎之助というひとりの男の生きざまを通してその時代に生きて翻弄された人物の視点から見てみると改めて驚きます。それにしても池波さんの描く西郷さんや桐野利秋はとっても魅力的です。面白かったです。
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今日、当本が原作の芝居を観た。
素晴らしかった。
そして原作をぜひとも読まなくてはと思い、ここに挙げている。
幕末〜昭和の、激しく揺れ動いた時代の中で、この作品を書ききった著者の懇親の覚悟、
そして心意気に脱帽、そして敬服だ。
「時の移ろいに左右されるな」と、
そして「生きろ、時代の移り変わりを見届けろ」と、
あの血気流行った時代で、後進に説いた先人の真の心とは。
私達が今在るこの時は、幾多のいかなる時を経てのことなのか。
改めて己に真摯に問いかけた。
普遍的で、かつ本質的なメッセージを問うた作品。
これぞ文学という名の剣。
著者の智恵そして聡明な志と、この時代にこそこの作品を芝居にしようという難事業に
挑んだ人々に心からの喝采を贈りたい。
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1巻しか読んでいないが、まあ面白い。
作者の筆力でぐんぐんと惹き付けられる。が、格好よく謙虚で剣の冴える主人公が色々な事件に遭遇し、善意から対処していくというストーリで2巻を読もうという気にイマイチなれない。読んでもいいけど、もっと他に楽しい本があるんじゃないかなって思って止めてしまった。
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これぞ池波正太郎の娯楽時代小説。剣あり、女あり、友情や師弟愛あり。江戸末期、病弱な少年は謎の剣士を師と仰ぎやがて自身も剣士となりかえってくる。江戸で京で杉寅之助の活躍が始まる。
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杉虎之助は、病弱な男であった。
父親は、誠実で、実直な人であったが、子供に十分配慮する余裕もなかった。
後妻に、男子が生まれ、義理の母に冷たくされて、
いっそのこと。死んでしまおうと川に身投げをするが、
池本茂兵衛に 助けられるのだった。
そして、師と仰ぎ、身体を回復し、呼吸法を学び、
剣術を学び、見違えるほどになった。
時代は、幕末。
そこを、駆け抜けようとする男の物語。
池波正太郎が、幕末という時代の変化を、とらえ、
まっすぐな、青年を描き切ろうとする。
死を直面する伊庭八郎の想いが、切なく、清々しい。
八郎と虎之助の交友が、互いを理解し、尊敬し合いながらも、
青春らしく、ハニカミもあり、いいなぁ。
礼子、お秀の二人に、虎之助は、どうつながって行くのだろうか。
物語は、始まったばかりだ。
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幕末から明治までの時代を生きた剣士の数奇な人生を描いた作品。3巻にわたる長編小説であるが、この1巻は主人公・杉虎之助が義母にうとまれた挙句川に身を投げることから始まり後に大きく関わることになる薩摩藩との出会いまでが語られる。
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「寝る場所と、女を抱く場所と、酒を飲む場所。この3つは、どんな野郎にとっても欠かせねえものだ。この3つが、どこの誰にもうまく行き渡った世の中ならば、騒がしくはなりますまい」
幕末から明治への世の中を舞台に、主人公の杉虎之助の生涯を描きながら、維新史の断面を描く物語。
虎之助は微禄ながら旗本の嫡男だが、生来の病弱に加えて義母に疎まれ、そんな我が身を儚んで13歳のとき大川に身を投げるが、謎の剣士・池本茂兵衛に助けられ、彼に弟子入りし、諸国漫遊の旅に出る。
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購入してから永きに渡り本棚に積まれていたが(17年程…)、出張の供に選ばれ遂に読了♪流石は池波センセ、とても面白いです