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はじめ"ジョゼフ"と呼ばれていた野生児は後に"ヴィクトール(勝利者)"と名付けられた。
私には本当の意味で勝利者であったのかはわからないが、はじめ自分以外のモノには全く興味を示さなかった少年が服を着て、物を考え、簡単な単語とその単語が意味するものとを関連付けることが出来るまでなったのは、おそらくイタール氏とゲラン婦人との弛まぬ努力の成果だろうと思う。
氏は後に、この禁じられた実験は失敗であったと語っているが(実験は途中で止められ、ヴィクトールはゲラン婦人に世話をしてもらいながら推定年齢40歳くらいまで生きたらしい。ちなみに死因は不明である。)この実験によって得られた結果が、その他多くの人々を助ける教育につながったのはとても素晴らしいことだと私は思う。
人はたとい体が育っても、心(広い意味での)が育たないと何に対しても興味を持てないことをヴィクトールは証明したのかもしれない。
自閉症説、知的障害説など諸説あるようだが、このような特殊なケースをそもそも型にはめるのも難しい気がする。
イタール氏が最後までその結果を恐れて行わなかった実験を、もし試していたら…。
"おもしろい"と感じるかは人それぞれかと思うが、私にとっては"興味深い"内容だった。