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紙の本
多変数関数の微分積分を知っている方へ
2019/03/16 06:44
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投稿者:類太郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
多変数関数の微分積分の理解が前提だが, 微分方程式・ベクトル解析・複素関数・フーリエ級数・ラプラス変換の基礎を初歩から分かりやすく解説している. 例えば, 正則関数の定義(複素関数の微分の定義)をしたら, 微分可能性の同値な言い換えの定理を述べる前に, 正則関数は等角写像であることを図説と共に述べている. その後にも具体例と言える図と等角写像の章があり, 物理学的にも工学的にも実在感が湧く. これは理論重視の本とは違う分かりやすさがある.
論理は必ずしも厳密ではないが, 必要最小限の内容が適度に直感的に書いてあり充実している. 多くの図説には助けられた. 時々ある物理学と関連づけた説明も理解しやすくしてくれる.
ていねいな語り口で読んでいる側が著者たちの世界へ引き込まれていく.
複素関数の積分は「複素リーマン和」により定義している. 「区分求積法」「リーマン和」から自然に発想したり理解できるもので, 初学者への配慮が, ここにもある. もちろん, そのすぐその後に, 複素関数の理論において最も簡単かつ実用的な定義を公式として記されている.
「大学1・2年生のためのすぐわかる数学」と同じく数学検定1級や編入の対策にも適しているであろう.
演習問題には良問の証明問題も多く, 複素関数の章ではε-論法も少しあり, 付録にある微分方程式の解の3つの一意存在定理とそのうち基本的なコーシー-リプシッツの定理の証明およびフーリエ級数の話は専門的な数学へとつながる.
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