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歴史ミステリ。
これはミステリとはつくものの
謎解きよりも冒険に重きを置いているので
そんなに堅くならずに読むことが出来ます。
おもしろかったのはやはり、
決闘のところでしょう。
ダーウェントに明らかに不利な状況下にあるのに関わらず、
彼はそのピンチを冷静な判断で乗り切るのですから。
ミステリが苦手な人にお勧め。
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死刑囚とその男を知ることもなく夫にした美しい女遺産相続人。
これまで読んだカーの本とは何だか違うような。
一転、侯爵になってしまうくだりと決闘シーンが面白い。
解説求む!
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所謂カーの歴史ミステリシリーズの第1作目とされている。本来ならば『深夜の密使』こそがそれに当たると思うが、あの作品はカーター・ディクスンでもカー・ディクスンでもない別名義で書かれていたせいで、カーの作品とは長らく気づかれなかったようだ。そのため公式的にはこれがカー初の歴史ミステリ作品と云われている。今回は世間の通説にならって、本書を第1作として感想を書くことにする。
さて第1作目ということもあって、真っ当な歴史ミステリに徹している。『火よ燃えろ!』や『ビロードの悪魔』で採られたような現代人がタイムスリップして事件の解決に当たるといった荒唐無稽さはなく、あくまで本書で探偵役を務めるのはその時代の人物である。
ディック・ダーウィンはフランシス・オーフォード卿を殺害したかどでニューゲイト監獄に死刑囚として収監されていた。しかし彼はそれが冤罪であることを知っていた。そのディックに1人の女性が訪れる。その女性キャロライン・ロスは叔父の遺産相続の権利があるのだが、結婚をしていないと無効になるとの条件があり、そこで死刑囚であるディックに目をつけ、遺産相続のために形式だけの結婚を求めに来たのだ。
その要望を受入れ、監獄で形式だけの式を挙げた2人だったが、突然ディックの死刑が中止になり、ディックは釈放されることになる。ディックは自分が死刑に追い込まれたオーフォード卿殺害の真犯人を探りあてることにする。
財産目当てに結婚した女性と図らずも結婚生活を共にすることになるという、なかなか類を見ないシチュエーションである。そして晴れて釈放の身となったディックのその後の活躍はなかなかに面白く、ヒロイック小説的な様相がある。
なぜカーが歴史をさかのぼってこのような物語を著したかといえば、当時のまだ万人に対して公平ではなく、理路整然としていないイギリスの法律の抜け穴を小説の設定に利用したからであろう。ディックが釈放されるのはディックが貴族の出で、死刑の前に爵位を持つ叔父と従兄弟が相次いで亡くなり、ディックに爵位が継承され、ディックの死刑判決が下されるのがその後だったことから、貴族であるディックは上院による判決が必要になり、それまでの判決が無効になる。そして上院での再審はなんと慣例的に無罪になるという、今では到底信じられない裁定が下されるのだ。
後年同著者の『エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件』を読んだ時にも強く感じたが、中世イギリスの法律というのは本当にいい加減で、貴族ら上級社会層の人間に有利に働くように制定されている。だからこそ生まれる珍事というのがあり、本書もそれに着目したことから本作のプロットを練ったに違いない。
さて事件そのものはあまり大した事がなく、本書はどちらかといえばミステリというよりも冒険活劇小説の色が濃い。私はカー=本格ミステリという先入観があったせいか本書はそれなりに楽しめるものの、カーの作品としてはどうかという疑問を持ってしまった。しかし実は本書を読むことで次に読む『ビロードの悪魔』に対する私の読書スタンスが決まったわけだから、『火よ燃えろ!』同様、今改めて読んでみるともっと面白く読��るかもしれない。