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著者の文章にはやや説明しすぎる印象があるものの、主人公の真っ直ぐな生き方や人との爽やかな接し方が、夏を舞台に鮮やかに描かれ、好ましい。
二十歳そこそこの彼女は、二年くらいかける予定で、オートバイで日本中旅をする。
旅先での過ごし方や見知らぬ人々との交流、そのいずれもが彼女の人物像を一層輝かせる。
その場限りで通りすぎてしまいがちなシーンの一つ一つに、彼女は、実にさりげなく、誠実な足跡を残してゆく。
とりわけ惹かれるのが出会う人々との接し方。
人見知りしない伸びやかさと年齢に見合った潔さ、そして過不足のない明晰な受け答え…そのすべてにおいて“清潔な弁え”がある。
相手と真っ直ぐに向き合う凛とした若さは、まさに真新しい“白いTシャツ”そのもの。
彼女や彼女の両親の“グッドアイデアはいつも賛成”というスタンスと、三津子さんの“肯定的に楽しみにしてればいいのよ”という言葉は、これから、事あるごとに私を勇気づけてくれることだろう。
幸せは、日々の姿勢の中にある…そんな気持ちにさせてくれた作品。
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2012/01/09読了
私の理想がまさしくコレだなあ
オートバイで、宛てもなくふらりと旅をして。その先で知り合った人と、手紙のやり取りとかして
大切なものが増えてく、そんな旅路。
それはかつて私の父が実践した旅だ。
今ではこういうことって出来にくいんだろうなあ。便利になるたびに自由がどんどん失われていくのね。
仁美、私と同じ読みをする名前―が、旅先で出会う景色や人々。仁美の父母の、友達になるためのお別れ
穏やかな時間がゆったりと過ぎ去っていく。そんな小説でした。
ああ、オートバイ。時間も欲しい、自由が欲しい。自由になりたい。そう思ってしまうよ。この小説を読めば。
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学生の頃に読みました。オートバイが自由の象徴の様に思ってました。湿り気のない文章とマッチして片岡ワールドにはずいぶんのめり込みました。
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旅行に持っていく本を探していて、本棚から数十年ぶりに手にした。十代のとき片岡義男を夢中で読んだ。バイクの免許はまだなかった。いま読み返しても、ワクワクした。仁美のような女の子に出会ったら、可愛くてしかたがないだろうな。タンク・ロリーのドライヴァーがご馳走に誘う気持ちがよくわかる。オイラが若い時分に仁美に出会えたら、好きになってしまうんだろうな、太刀打ちできないのに。
三好礼子の写真を見ながら小説を読む。久しぶりの感覚が楽しかった。小説の枠を越えようとする勢いを感じる。角川文庫が元気だったなあ、そう言えば。
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オートバイと旅。そして夏。
熱海の宿で読み終えた。
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20210316 三度目の再読
「メイン・テーマ」に出てきた北原仁美の物語。オートバイの旅で出会う人々。両親の仲の良いままの離婚。
彼女がいつも持ち歩いているバインダーをトラベラーズノートに脳内変換して読むとたまらないものがある。
描写が映像視点で、心理描写がほとんどないのが逆に良い。映画を見ているような気分。最後に仁美が今の気持ちを手紙に書くところでグッと来た。
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『美枝子さんと弘太郎さんは、これからどうなるのでしょうか。楽しみです。期待しています。私は、どうなるのでしょう。ふりかえるほどの過去もありませんし、あてにする将来も、いまのところないのです。私の手もとには、現在だけがあるのです。そして、その現在は、とても素敵です。』
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写真もとてもいい。夏と旅とオートバイ、まさにそんなイメージ。電子書籍版には文庫には収められていない未公開写真も入っていて、これらがまたとてもいい。
片岡らしいエピソードや描写があちこちに。これをひとり旅の道中で起きるさまざまなこととして楽しめるか、気障ったらしい小説と取るかで、片岡作品が合うか合わないかがわかるリトマス試験紙のような作品ではないか。
また再読したくなる作品だ。
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晩夏のさわやかな風が思い起こされる。これはないかなって行動もいくつかあるけど、全体としてとても落ち着いた涼やかさを感じる。もっと若いうちにバイクの免許を取っておくのだった。