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主に血族後継の事例研究をした名著。成功事例や失敗事例だけではなく「指名する側」「指名される側」「社内の受けとめ方」が網羅的に分析されており、関心の高いテーマにも関わらず類書があまり無いため貴重といえよう。1984年出版のため、いまとなっては賛否両輪がある西武グループなども掲載されているが、内容自体は全く色褪せていない。
創業者は強烈な個性とカリスマ性で以って企業を反映させ、その企業を後継するということは即ち先代を超える経営力を持って第二創業してきたといえる。並みの能力では「七光」と囁かれる。特に堤義明氏、青井忠雄氏、牛尾治郎氏の経営センスは新たなる創業者と評しても過言ではないだろう。キッコーマンや味の素の女婿の事例も興味深い。逆に映画会社の後継者たちは凡庸な能力と予定調和に胡座をかいて失墜させた悪き例であろう。
同族経営は盲目的に批判される傾向があるが、伝統芸能は世襲制だし、酒造も家族経営が主だ。本書は親が子を厳しく鍛えあげる難しさ、七光の呼び名を排除する大変さが描かれており、後継者を血縁に求めるか否かのひとつの指針として非常に有益なものであろう。