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作家でコピー・ライターの糸井重里と、作家でイラストレーターの橋本治がおこなった対談をまとめた本です。
単行本版が刊行されたのは1980年で、糸井、橋本両氏が時代の流れを牽引していた時代ともいえますが、本書を読み返してみると、彼らがたんに時代に流されているのではないことがすでにこの時点ではっきりとうかがえることに驚きます。
とくに橋本は、自己の内側へ向けて例のごとくくだくだしい問いを差し向けることで、表層的な時代の変化を見わたす立脚点をつくりあげようとしています。これに対して糸井は、時代の変化を現わすタームを徹底的に外からながめ、それらをつないでいくことで時代の輪郭を浮かび上がらせようとしているように思います。
わたくし自身はかねてから橋本に心酔しているということもあって、橋本のことばのなかにキラリとひかるものを拾いあげるようにして読んだのですが、糸井の発言にも興味をひかれるものが多くあったのは意外でした。橋本の対談が収められている本としては、中野翠との対談本である『ふたりの平成』や、内田樹との対談本である『橋本治と内田樹』(ともにちくま文庫)などがありますが、とくに本書は橋本がとんがっていた時代ということもあり、読み応えがあったように思います。