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紙の本
日本文化論の決定版
2022/11/18 01:33
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投稿者:あ - この投稿者のレビュー一覧を見る
比較文化論として日本の文化について研究された本である、ベネディクトの菊と刀、土居健郎の甘えの構造、などにも言及している。
木村理論ではお馴染みの「あいだ」を活かして日本人の心性の深層にある生き方を解き明かすことで文化的差異や病的精神現象の差異の理由を探っている。
甘えの構造についてかなり突っ込んだ議論をしているため甘えの構造を読んだ人は特に読んだ方がいい本になっている。
河合隼雄も対人恐怖症や日本の家の作り、家社会、人称代名詞について論じているが本書でもやはり論じている。けっこう河合隼雄の文化論と記述が重なるところがある。
またヤスパースの発生的了解の態度によって深められた和辻風土学に注目しヘルダーの風土化などの概念を援用しつつ展開される論理は非常に面白い。ハイデガーをベースに自己了解の場として風土を捉え、主体ー環境二元論を克服する和辻の論をさらに一歩進め木村生命学というべき次元へと到達している。
鬱病の罪責体験の様式や日本で急性の統合失調症に緊張型が多い点に注目し、そこから根源的な日本人の自然との出会い方、距離感を論じている。この辺は精神科医にして統合失調症を専門に治療しドイツにも留学していた木村だからこそ可能な考察だろう。
また木村の提唱した家族否認症候群の文化差についてを家という観点から解き明かしたひもしている。
本書はトランスカルチュアル精神医学として文化を超えた文化論であり、非常に高度な論理を構築している。
文化や社会構造を個々の精神を規定する根拠とせず、それらを作られたものとして、より根底に自然との出会い方、生き方を探り、文化を規定するところの原理を明らかにしている。
そうして自国の文化の特殊性にわけいることで翻って人間の生命の普遍性へと到達することが企図されているところに本書の価値は集約されるだろう。
昨今のネット右翼の愛国ポルノ的な悦に入ることを目的に反復される自国文化への底の浅い省察でもなく、リベラルやサヨクの欧米コンプレックスに起因した厚顔無恥の反日主義でもなく、普遍と特殊、同一性と差異性を止揚する完成された文化論として日本文化への省察が徹底されているのである。
かくも高度な思推が前世紀にありながら、今日的言説の幼児性を思うに、今世紀の日本人は猿のごとく退行しているというより他ないだろう。
ここまで大衆のレベルが下がってしまうとこうした本を理解できる人は限られると思われる。
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