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1)走るやさしさ−上田秋成
2)反自然の自然−狂言作者たち
3)瞠視された空間−泉鏡花
4)観察から幻視へ−幸田露伴
5)伝説と小説-折口信夫
6)経験主義と神秘−柳田国男
7)博物誌の文体-南方熊楠
8)銀河と地獄-岩野泡鳴
9)幻想の地誌−佐藤春夫
10)篤実な誇張法−牧野信一
11)陰画の浄土−藤枝静男
12)魂の修練の諸段階−吉行淳之介
目次だけじゃ芸がないんで〜
5)伝説と小説〜折口信夫〜
説経節への関心から生まれた著述のうち、
学問的研究とは見做し難い、平たく言うと“これは小説やろー“って普通は思う、「身毒丸」を、折口がどうして研究と言い張って(←暴言御容赦)いるのか?それを我等の川村センセ が「まあまあ、それはだねえ…」と語ってくれます。その回答は正直言って、「膝ポンレベル」まで降りて来てくれるものではありませんが…(ワタクシ的にはかなりコジツケ)
「身毒丸」同様に、高安長者伝説→謡曲「弱法師」→
説経節「しんとく丸」→浄瑠璃「合邦」の系譜を負うている、三島の「弱法師」を引合いに、作者の透け具合の差異をはっきりさせる所が面白かった。
いやあ〜これらの作品の性質上、世にカミングアウトされちゃっている三島と折口の個人的嗜好を意識するなってのが無体な話で、その辺の下世話な関心をつつく辺り、四角四面な学者様でない川村センセの力量を披露する形に結果としてなっているのが、イヤイヤ、実にお見事ですわ〜
ここに、同じ説経節オリジンとは言え、鴎外の「山椒太夫」を出してくる意地悪さもナイス〜さらに鴎外が自分で“いや、あれはね…“と言い訳している「歴史其儘と歴史離れ」でトドメをさすところ、マジでワロタ!川村センセ、ひょっとして、鴎外がお嫌い? ^O^¥
7)博物誌の文体〜南方熊楠〜
「文体だけ…」と断り入れたって、何十頁かで巨人を語ろうってのが無謀でしょ。但し、一連の芥川@今昔物語オリジンを「真面目に頑張り過ぎててウザい」で流す辺りに好感度up *^^*
8)銀河と地獄〜岩野泡鳴〜
えええ〜!
このラインナップで表題作はコイツ(←再度暴言御容赦)かよ… ドッと脱力。川村センセ、趣味がイイんだか悪いんだか…
もっとも、道楽亭主と現実的夫人の即物的な口喧嘩の引用に「何という美しい会話だろう。」と続けられたのはツボで、ふきました、私。