投稿元:
レビューを見る
新規購入ではなく、積読状態のもの。
2010/8/18〜8/21
上巻に続き、虚と実の世界が入り混じりながらストーリーが展開する。八犬伝というのはこんなにまで大作であったのだ。全然覚えてなかった。風太郎先生は、八犬伝をだしに、馬琴の巨人、虚人ぶりを書きたかったのだ、ということが良くわかる。
投稿元:
レビューを見る
下巻もほぼ一気に読み終えました。
親兵衛くんが出てきてからの話はかなり中国古典的になってしまい、
八犬伝そのもののストーリーを楽しみにしていた私としては、ちょっと
ガッカリしました。
ですが、実の世界における曲亭馬琴のキャラクターは、だんだんコミカルとでもいうべき哀愁が漂いだしてきて最後には憎めないキャラクターになっていました。
(北斎との掛け合いがもっと多ければより面白かったはず・・・)
作者の曲亭馬琴へのやさしい目線から風太郎さんは馬琴がすきなんだろうなと感じました
読み終わった後に気分の良くなるとても良い本でした。
山田風太郎さんの別の本にも手を出してみようと思います。
投稿元:
レビューを見る
虚の世界と実の世界と章分けされ、語られた内容、語り終えての姿、ときれいに分節されたものが、最終章では入り混じる。
これは後半五分の一が退屈なせいもあるが、それよりも描き出したかったことがあるはず。
八犬伝が虚の江戸神話ならば馬琴とお路のタッグは実の江戸神話だ、という結びである。
それだけでも感動ものだが、それ以前に「親子であるがゆえの確執」がしっかり描かれ、人として生きることの、つまりは浮き世の儚さが描かれているからこそ辿り着けた結末なのだ。
感動とはこういうものなのだな。ぐすん。
投稿元:
レビューを見る
八犬士が活躍する“八犬伝”の世界が開かれる「虚」の世界、そしてそれを語り綴る馬琴翁の、まさしく「小説よりも奇なり」である「実」の世界。何の罪もないはずの自分や息子や正しき人が苦しみ嘆くまことに複雑怪奇な「実」の世界において、馬琴は正しいことが正しく結果を見せる正義の世界、「虚」を書き続ける。それがかつて鶴屋南北が言ったように、この浮世たる「実」の世界では“無意味”なことであろうとも――やがてその目は光を失っていくが、馬琴翁とその息子の嫁・お路は“八犬伝完結”を、諦めない! 日本が世界に誇る長編伝奇小説誕生の、知られざる物語。
段々八犬伝の話よりも「実」の世界、馬琴さまの話の方が気になって気になって。虚の世界はやく終わんないかなってちょっと思ってましたw 八犬伝は好きなんですけど今まで馬琴さまについてほとんど知らなかったんですよ。お路さんのことはさすがに知ってたけど、あとは八犬伝本文中で伺えることくらいしか知らなかったし、「八犬伝の世界」やこの八犬伝を読んでいろいろ初めて知りました。だからこれでも一応国文専攻卒(そうだ、卒業したから学士という称号があるじゃないか)のはしくれとして文学研究の一環としての作家研究というのもすごくそそる研究なのですが、今後は八犬伝楽しむ上で馬琴さまについてもいろいろ知っていきたいしいろんな小説や評伝なんか読んでみようと思います。なんか勝手な印象ですごい悪いんですけど、馬琴さまは私の好きな漱石と鏡花のあんまりよろしくない部分をいい具合にブレンドした作家だなあw とちょっと思いました。もともと何か鏡花っぽいなとは感じてたんですけど。お路さんは漱石夫人の鏡子さんぽい感じがします。宗伯が亡くなってからの彼女は特に。
本当に「実」の世界の方が嫌なことや変なことばっかりおこって。だからこそ私は「虚」の世界、物語で人間として大事なことを描いていきたいなと思う。馬琴さまもそうだったからなんか安心しました。
この作品でもそうだけど馬琴さまはよく八犬伝の中でこんな稗史無駄なんだけどさ、みたいな風に書くけど、私はそんなことちっとも思わない。だって28年もの長い間馬琴さまが視力を失っても書き続けた。確かに長い話で辟易する人だっている。でも、馬琴さまの熱意とお路さんの力もあって完結させた。完結させるって創作やってる人ならわかると思うけどすごく難しいことなんです。そして八犬伝は日本文学史に、そして後世のいろんな作品にその勇名を今でも轟かせている。今の私がそうだけど、沢山の人に影響を与えてる、熱を与えてる、もうずっと昔の本なのに! 私は平安時代や日本近代の物語も好きだけど、ここまで熱くなって自分でも創作するエネルギーを与えてくれる作品は馬琴さまの八犬伝以外にないんだよ。私の人生のひとつの支柱たる「物語」、それをいっちばん象徴してるのは八犬伝なんです! それが虚しい物語なわけがないんです! 意味がないわけもないんです! 虚が本物になる時だってあるんです。
たとえ馬琴さまがいくら否定しようと、私にとっての八犬伝は実の物語。一生手放したくない物語です。代筆したお路さんだってきっとそう思ってたんじゃないかな。作家に���って物語が「実」でなかったら、そんなの浮かばれませんよ、物語が。
とまあなんか私の八犬伝への想いが爆発した感じになりましたが、馬琴さまへの興味も持ててとても面白かったです。実はこれが初の山田風太郎でした。八犬伝関連書物読書の旅、まだまだ続きます。
投稿元:
レビューを見る
下巻となり、夢中になっていた虚の世界よりも、現実の馬琴や北斎の周辺の方が面白くなり始めた。実際の彼らについてわかっていることに忠実に物語を描いているのだろうが彼らの人となりはとても興味深い。最後近くになって虚実が混じって書き表されるところになると、虚の分のあらすじがさらにあっさりしたものになっていくのだが、その分今度は完全に実の物語にのめりこみ、一気に読了してしまった。八犬伝という題名だけれどそれを書いていた馬琴の物語として堪能した。読み終わってみるとこの虚実の配分などが大変計算されたものだと感動した。
投稿元:
レビューを見る
これまでに八犬士が大活躍する「虚の世界」と、著者馬琴が不運や過酷な境遇に四苦八苦する「実の世界」が交互に繰り返されて進行してきたが、正直、「実の世界」は箸休め的な感じだった。しかし、最終章「虚実冥合」では「実の世界」が舞台ながらも「虚の世界」を吹き飛ばさんばかりのすさまじさ、おもしろさであり、あっさりとしながらも重みのある最終行に感動をおぼえた。
投稿元:
レビューを見る
昔は胸を躍らせて読んだ南総里見八犬伝だったけど、きれいにまとまりすぎて今の私は少し物足りなさを覚えてしまった。読み進める上で馬琴の実の世界があることに助けられた。完璧に整えられた世界より、馬琴が住む実の少し歪な世界の方に親しみを覚えてしまった。作者についても八犬伝についても触れることができる良本。
投稿元:
レビューを見る
虚の世界の里見八犬伝の展開も面白いんだけど、それにも増して偏屈で有名な北斎をして偏屈と言わしめる馬琴の頑なな様子が楽しい。この性格で今読んでも充分にワクワクするファンタジー義士伝を数十年にわたって書き上げるんだから、北斎が不思議に思うのも納得できる。
まあ、半分は山田氏の創作でしょうが。
特に親兵衛のキャラクターが秀逸です。原書でもあんなに可愛く描かれているのかな?
いつまでも風化しないであろう素晴らしい作品でした。