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原題のThe Fourth Protocolを素直に訳せば、第四議定書とでもなろうか。本書は、1961年に米英ソ間で締結された核不拡散条約に付帯する四番目の議定書すなわち将来技術的に可能になるだろうと想定した小型の核爆弾をめぐる英ソの息詰る駆け引きがテーマであり、背景がサッチャー保守党に対する労働党の政権奪取に続く労働党左派によるイギリスの社会主義化である。 前半は、若干、荒唐無稽とも思われる政権奪取のリアリティを作るため非常に細かに筆が入っている。 今でこそトニーブレア首相が「第三の道」として自由主義経済と福祉政策を表に掲げたことより労働組合色が薄れているが、当時の労働党はとついつい考えてしまう。 前半は、細かに背景を塗った関係で展開がややまどろっこしいがそれでも十分に魅力的である。 以上は2008/03/29の書評であるが、うっかりしてまた読んでしまった。 最初読み始めて、ややと思ったけど細部を忘れていることもあり4年たった今回も十分楽しめた。 プロットは、2つの工作が関係あるのかないのか不明な状態で進行していく。まさに骨太スパイ小説である。007でも有名なMI6(SIS)のチーフ ナイジェル卿とMI5の課長プレストンの切れの良い推理が、小説全体を引き締める。前回★3でしたが、今回★5で。