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シャンボール城へようこそ
少し前の美術番組で、ダヴィンチが設計したという、フランスの古城の二重らせん階段の話をやっていたのです。2つの階段の入口から別々に上っていくと、上に着くまで出会うことはないといいます。ふわぁぁと思ったけれど、今ひとつイメージが掴めません。こういうのは実物を見るに越したことはないのです。が、浮き世のしがらみやら懐事情やら、諸々あって、そう簡単にフランスまでは行けません。
そんなときには本ですよー。
というわけで探してみました。
ロアール渓谷へ、いざ。
86年発刊で、いささか古い本だけれどまったく問題ありません。何といっても古城が出来たのが16世紀です。
子ども向けの本ですが、中の説明はかなり詳しく、字も細かめなので、やや大きい子向けかと思います。
ちょっとトランプのキングやジャックを思わせる細密な絵が、お城のなりたちから、実際に使用されていた当時の様子、そしてその変遷を案内してくれます(書影が出なくて残念!)。
ときはフランソワ1世の時代。気候のよい美しいロアール渓谷には、数多くの城が建てられました。戦争に明け暮れつつも、自分の望む城を造ろうと細かくうるさい注文を出す王侯貴族に命じられ、左官や大工が城作りにいそしみます。この時代の労働環境についても解説があり、興味深く読めます。
大建築工事はそうそう短期間に終わるものではなく、建築中に発注主が死んでしまうこともしばしばだったそうです。
らせん階段で有名な、くだんの城はシャンボール城。階段が実際にどのようなものなのか、断面図で紹介されています。赤と青に色分けされた2つの階段の絵を見れば、交わることがないのは一目瞭然。これはちょっと感動ものです。ある意味、実物を見るよりもわかりやすいかもしれません。
城で繰り広げられる豪華な宴の陰には、たくさんの人々の労働が必要でした。こうした人々の働くさまもいきいきと描かれています。
広い広い城を暖めるのは大変なこと。シャンボール城には365台の暖炉があったんですって! 使用人はわずかな薪しか与えられず、寒さに震えていたのだそうですが。
城って見るからに寒そうですよね。寒がりの私はとても住めません。
いながらにして、お城に行った気分が味わえて幸せ。
いつかは本物を見てみたいけど、とりあえずは満足です。
*見返しの地図、雰囲気があってすてきだけど、ロアール渓谷は地図の外でした。読み慣れないフランス語の地名を一生懸命読んだ挙句、ロアールはないだなんて、それはあんまりじゃ(^^;)。