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紙の本
失われた日本人の感覚を呼び戻せる内容です。
2007/10/05 14:09
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
学生時代、ドナルド・キーン氏のエッセイを読み、アメリカ人の日本研究者がいることに非常な驚きを抱いたことがあった。
さらに、日本で生まれ育ったわけでもないのに、氏が日本語通訳を専門とするアメリカ海軍士官であったことに二度も驚かされたものだった。占領地や激戦地の跡を訪れ、日本人捕虜の尋問や戦地に残された手紙、日記、新聞、雑誌の類いに至るまでを読み解くのが仕事であったというが、日本兵の肉親との手紙、手帳に記された日記から日本人の感性に感激を覚えたという。
そのドナルド・キーン氏の雑誌や新聞に掲出された文章を一冊にまとめたものが本書になるが、複数の媒体に載ったものであるにも関わらず、一連のものとして読めるのが不思議なくらいだった。それだけ、氏の文体や日本及び日本人に対する研究の過程がぶれていない証明だろう。
4つのパートに分れているが、日本との関わり、日本と日本人について、日本の伝統芸能、日本文学と文学者との交わりについてが出ているが、日本の近代についての歴史書を読んでいるかの如き錯覚を覚える。
ドナルド・キーン氏は極東軍事裁判に関わることで日本を訪れようと試みるが、戦争犯罪人を裁くセレモニーに参加することに疑問を感じて拒否してしまう。「戦争犯罪を裁くことの意味」という一文にその経緯は詳しいが、続く「刑死した人たちの声」では戦争犯罪人として処刑された人々の遺書にまで目を配らせていることに氏の良心を感じる。
ドナルド・キーン氏の功績はなんといっても日本の伝統芸能や日本文学を世界(今の時代もそうだが多くはアメリカを指す)に広めたことだろう。日本語を翻訳する際の苦労話もいくつか出ているが、日本文学に関しては谷崎潤一郎と三島由紀夫との交遊話が興味を惹いた。
特に三島由紀夫との思い出について記述されている箇所は現代の日本人にも真似のできない余韻のある文章で締めくくられていることが印象に残った。個性の時代といいながら、日本人としての原点を失ってしまった日本人が読み返さなければならないものと思う。
ただ、アメリカ人研究者に教えられるというのは皮肉なことだが。
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