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静かな言葉が読みたかったのだと思う。
三浦綾子さんが自分の来し方の中で印象に残った言葉を
挙げて、それに対しての思いを綴っておられる。
重い病と共に人生を歩み、作家として作品を紡がれた
その事情も語られている。
はっとさせられる言葉が多いし、考えることも多い。
でも、いい本だと思いながら、私は少し苦しくなった。
きっと三浦さんという方は真面目で、自分を省みる謙虚な方だろう。
でも、それと同時に、自分の中でのリズムが乱れることを好まない
苦しさも持っていらっしゃる気がした。
直感だから外れているかもしれないが、
そんなところが私には、少し息苦しく、癇癖なふうに感じられた。
信仰のある方なので、その祈りの中で
自分を律していられたのだろう。
苦しみの中から香り高い文学を生むのは、同じ経験をしても
誰もができることではない。病がこの方の才能を磨いたのだろう。
まさに恩寵であるし、尊敬の念も湧く。
なのに、私の中の何かが、この方の潔癖さ
枠からはみ出ることを嫌う折り目の正しさに
息詰まる。
物柔らかな端正な筆。
人を傷つけまいとしている優しい言葉。
静かな知性。
それを素直に受け取れず、
「なるほど、いい言葉だわ。」
と思いながら、そのあとに続く文章を
素直に受け入れられない自分が
悲しく、とても情けない。
何年かして読んだなら、
また違う感想も持てるだろうか。