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山の裾野の「下の村」に住むタマキの家には、東京から流れてきた島子、「上の村」から川を流れてきたという山比古、そして山比古が連れてきたヒロシが住む。赤の他人同士が暮らすのはタマキの家に限らず、近くの旭日荘も同様であった・・・。
なんか有名な作品なのかなー、だいたいこういうのって芥川賞的なやつでしょ、と読んだが、実は有名でも芥川賞でもないのか。男女4人が暮らし、そこに赤ちゃんと母親が潜り込み、旭日荘では毎日いくつもケーキを焼く娘や住み着く若者がいる。かと思えば農家の納屋に住み着く中年。
どの人物も、世界観も、何もかも特に何があるわけでもないぼんやりしたもので、文章もそれに輪をかけてぼんやりとしている作品だった。
芥川賞的な、ちょっとひねくれた比喩表現をしてみたり、かと思えば情景を描写していたはずなのに途中から誰かの視点で語り始めたり、その文章がやけに長かったりしてなかなかに読みづらい作風である。そういうのが思わせぶりで、ガンチクがあるとでもいうのか、好きな人には刺さるであろう。
一方で、かっちりした情景描写がなかったり、好き嫌いははっきりしていてもどうしたいのかがわからない人たちには、読んでいてイライラさせられる。
途中で「政治」「経済」という、何を言いたいのかはわかるが、作者の独りよがりの暗号のようなものがパラパラ出始めたあたりで結構読んでいて嫌になってしまった。
好きな人はいると思うが、作者も訳がわからず書いているような、変な落ち着きの無さが全編に漂った作品だった。