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>美しい浮気女
容姿の美しさは、人を少なからず思い上がらせる。男共は美しい女の下に跪き許しを乞う。何をかいわんやである。
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『美しい浮気女』…イギリスにおいて、美しい容貌を持った浅ましい女が、その美貌をもって男を魅了し、自らの私利私欲と欲望を満たそうとしたことでその周囲を不幸にしていく。
美しいことは罪ではない。しかし、そうした女性が持つ魔力に対する恐れや、淫らさについての危険をこの作品は説いているように感じた。
『オルーノコ~やんごとなき奴隷』…この作品を、『美しい浮気女』のあとに読むと、面白い。
『美しい浮気女』では、移り気で私利私欲に走る美女が描かれたが、オルーノコ~で描かれる美女イモインダは、貞節であり、自らが決めた男性のみを強く愛した。
美しい~のほうでは女を中心に、オルーノコ~では主人公を王子オルーノコにし、その勇敢さを描いたのも対称となっている。
そして、オルーノコでは黒人たちの持つイノセンス性を皮肉に描きつつも称賛しており、当時のイギリス社会の持つ欺瞞や低俗な精神を批判している。
美しい浮気女にしても、オルーノコにしても、いずれも当時のイギリス社会における問題を取り上げているものであり、
散文が一つのメディアとして利用されていることを示している。
文学として、内容や文体はともかくとして、そうした歴史的背景を想像しながら作品を読むことが好きな人には、
この作品を面白いと感じることができるだろう。
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夏目漱石の「三四郎」に登場していたこと、また白人が書いた初めての「黒人が主人公である小説(「オルノーコ」と「美しい浮気女」は別の物語で、黒人が主人公であるのは「オルノーコ」の方)」であることから興味を持ち、手に取った作品。
相当読みにくいであろうことを予想していたのだがそれほどではなかった。もったいつけた言い回しや、短い文章を句読点で区切って繋げて長文にする手法は、解説にもあるように作者の個性として受け入れられるレベル。小説というよりは聖書を読んでいるような気持ちにさせられた(内容としてではなく文体として)。
黒人が主人公の小説ではあるが、当時の奴隷制度や黒人差別に対して、先立って異を唱える先駆者的なものではない。主人公の容姿が「黒人にはあるまじき」美しさだと強調されている部分など、黒人差別が如実に(自然に)表れているように思えるし、なにより主人公自身が奴隷の売買に関わっており、それを悔いる描写もない。「オルノーコ」「美しい浮気女」両編ともに輝かしい美貌を備えた登場人物がこれでもかと出てくるところなど、ロマンスというか大衆的というか、とにかく「娯楽小説」の分類ではないかと思う。特に「オルノーコ」はロマンスもあり、英雄譚もあり(というかごちゃ混ぜ)、予見し得ない展開で読者を飽きさせることはないが、構成に破綻や矛盾が度々見受けられ、まさに「上・中流階級が無聊を慰めるべく片手間に手に取る本」といった印象か拭えない。
ただ、当時の世界情勢において、奴隷制度や人種というものが世間にどのように受け取られていたのか、また宗教や貞操などに関した一般的な価値観は、ということを考える点にあたり、十分に価値あるものだと思う。