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トーマス・マンの最重厚長大な4部作、合計1,840ページ!しかも、2段組で、3分冊。
寝転がって読むと手が痛くなる重さ。
ついに、読み終えました。
長い長い物語もついには終わることがあるという当たり前の事実にただ驚く。
読み終えた達成感もあるものの、この物語が終わってしまったことへの名残惜しさのほうが強いかな〜?
トーマス・マンの小説は、最初のほうは、ゆっくりと進んでいるのかいないのかわからない細かい状況設定がつづき、半分くらい進んだところで、ようやく話が展開しはじめ、最後の残り4分の1か、5分の1くらいになって、急激に加速してクライマックスにいたる、という構成のものが多い気がする。
この「ヨセフとその兄弟」の4部作の最初の3部はそんな構成であるが、その最後を飾るこの第4部は、最初のほうから、話は順調に展開していき、半分くらいに達したあたりから、クライマックに入っていく。
で、クライマックスは、1度ならず、2度、3度と繰り返され、あとは、この長い物語もその長さに応じて、クールダウンしながら、ゆったりと終わっていくのかと思わせといて、最後にも、さらに1段、2段のクライマックが用意してあったりする。
いや〜、すごいな〜。見事だな〜。
第4部は、カナンの地とエジプトの2つの地で展開した物語を地理的に統合し、ヨセフとその兄弟の確執を統合し、ヨセフとその父親との関係を統合していく。
そして、その統合は、それまでの物語の変奏曲でもあり、新しい命を吹き込むものでもある。
旧約聖書が題材で、「神」の問題を深く探求する小説でありながら、極めて人間的で、アーキタイプともいうべき神話的な人と物語りが語られている。
そして、ヨセフは、そしてヤコブも、ある種のトリックスターなのだ。異なる領域を行き来し、ユーモアをもって、違うものを統合する人なのだ。
宗教的でありながらも、明るい、人間への大きな愛があるな。
いや〜、まいったな〜。