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1994年、大学1年生の夏休み、雨の降る日に、地元の図書館で、わたしはこの本を見つけてしまった。無節操に選ばれた本が並ぶ本棚のなかで、上品な佇まいを持ち、また絶妙な蒼いいろをした本。『スティル・ライフ』という、だいすきなステファン・ロロフの掲げた一連のテーマ作品の表題が刻まれている。そして、作家・池澤夏樹さんとの出会い。氏の名前の字面のうつくしさ。わたしは何度も何度もこの本を図書館で借り、読み返した。手元にあるのは、1999年冬、20世紀の終わりに出会った恋人にダイスキな物語をプレゼントする為に、ディトの前に急いで買った文庫本のほうだ。芥川賞受賞作であるというのは、だいぶ後に知ったこと。
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冒頭の文章は、暗誦したいぐらいに好き。じんわりと胸が温かくなって、その一方で頭がひやりとして。人間がいかにバランスをとって生きているのか、その必要があるのかを感じる。
意識−無意識、外界−内界…、その狭間に立つ統合者である自己(セルフ)のイメージは素晴らしいなと思う。
そして何気に友情(?)もの・・・
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「ヤー・チャイカ」のディッピーがすごく素敵。それの象徴する意味とか全然わかんないけど考えても仕方ないのかも。特に細かく描写している訳じゃないのに、光景がありありと目に浮かぶのに驚く。
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聴き慣れた音楽のような言葉の連鎖。
スッと入ってきて、体の中でほどけていくみたいな感覚がありました。
不思議な読書体験。ずっと大事にする一冊だと思います。
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2008/3/8〜3/9
しっとりと透明感のある静かな本でした。星を見上げるとふと思い出してしまう本になりそう。主人公と佐々井のような生き方はできない人種なので羨ましくも思ったり。
『この世界がきみのために存在すると思ってはいけない。世界はきみを入れる容器ではない。』 冒頭より
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『ノルウェイの森』の後に読んだせいか淡々とした世界観、流れに逆らわない日常を送る主人公が少し似てた。
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芥川賞ってなんで面白くないんだろ?書評を見てこれは例外かと思たらやっぱり面白くない.こんな話書いてて楽しいのかなあ?何か書く意味があるのかなあ?
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故郷を離れるとき、意図して実家に置いてきた1冊。
帰省するたび、抜けるような青空の日に、または台風の嵐の中で、時には夜中の小さな灯りの下、郷里とはかけ離れたイメージに没頭する。
後に作家の池澤氏が故郷に移り住んだと知った時には、目玉が飛び出るかと言うくらい驚いた。
一生、読み続けるだろうし読み続けたい。
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読み終わった後のこの不思議な感覚は何だろう‥
テレビの音声を消して映像だけで世界遺産の風景を視ているような、静かで俯瞰的な感覚。
あるいはプラネタリウムに映し出された星座群が
降りかかってくるような‥。
しかし天体や景観の話ではなく、そういった“広い世界”が自分の内側にもあり、それが外の世界と上手く呼応し調和できた時、人は風のように、波のように、生きるのが楽になると説いている。
主人公の“ぼく”はアルバイトの染色工場で出会った佐々井とう男に、奇妙な仕事を依頼される。
ミステリーめいた謎を秘めながらも作者独特の
美しい日本語に感嘆させられる。
一つ一つの言葉の持つ煌めきと静かな語り口が
読み手の心に心象風景を生むでしょう。癒しの一冊。
図書館で借りて再読。芥川賞受賞作。
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私はものすごく偏った読書をします。
好きになった作家さんの本を全部網羅する勢いで読み、
ほかの人には見向きもしませんでした。
しかも、同じ本を繰り返し繰り返し読むので、
なかなか読書の幅が広がりません。
そんなんじゃつまらないなぁと最近になって思うようになりました。
それで、今まで手に取らなかった人の本も読んでみるようになりました。
池澤夏樹さん。もちろん名前は聞いたことがあったけれど、まだ未知の世界。
10ページほど読んだところで、もう大好きになりました。
登場人物たちはみな、
一つのことにゆっくりと思いをめぐらせる時間を持っていて、
そのことがとてもうらやましくなりました。
日々の生活ってそんなにドラマチックな激しさはなくて、もっと淡々と進んでいくものなのに、なんだかこのごろの映画やドラマや小説は、そうじゃない気がする。
胸を切り裂くような事件や、立ち直れなくなるような悩みに翻弄されてばかり。
でも、日々の生活の事件や悩みは、冬の乾燥した日にうっかり紙で手を切ってしまうような
誰にも分からないけれど、本人だけがちくちくと痛む、そんなものなんじゃないかな。
何が言いたいのか若干分からなくなってきたけれど、池澤さんの作品に出てくる人物は、
自分の価値観というガラス越しに世界を淡々と見つめている、そんな印象でした。
友人の犯罪も、自分の離婚も、娘の将来も。
もう一つ収録されている、「ヤー・チャイカ」もよかったです。
寝る前に読んでいたら、濃霧に覆われた夢を見ました(笑)
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染色工場で知り合った二人の面白いストーリーです。
本を読み終わった後の余韻は格別なものがありました。
一部抜粋。
「何でも店で売っているからね。 自分の手元に置かないで、店という倉庫に預けてあると思えばいい。 出庫伝票の代わりにお金を使うだけさ。 着るものは安いのを買って、一シーズンでおしまいにする。 書類は即座に始末する。 本は文庫本で、読んだらやはり始末する。 鍋や茶碗の類は最小限。 家具は持たない。 寝具はシュラフ。そのつもりになれば、そう難しいことじゃないさ」
こういう感じまで持っていけたらいいなと思う。
スティルライフは面白いけど、ヤー・チャイカはそんなにだったの星4つ。
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最初の文章に心を鷲掴みに...
とにかく出だしの文章は静かで...
そしてとてもドキリと来る。
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コップの水を見つめて「チェレンコフ光を探している」という佐々井。そして静かに去っていった佐々井。
宇宙の果てから地上へ毎秒一兆ほども微粒子ニュートリノは降り注ぐ。しかしそれと反応することもなく、ただ過ぎてゆく日々を、生きるだけの「ぼく」。
そこへふと現れた彼。…それは、コップの中の「ぼく」と、天文学的な確率で奇跡的に邂逅した、一個の微粒子だったのだ。
そうして彼は消えていった。一筋の光を放って。…
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面白い!
主人公が知的で、会話も洗練されていて、文章全体の雰囲気がいい!
殺人も婦女暴行もない。でも謎があり解決がある。そういうのって、いいよ。
ネタバレしない範囲でいうと、真似してグラスにウイスキーを注いで飲みたくなるし、山のスライドショーもやってみたくなる。
そんなかんじかな。
星四つの理由は、短編小説かつ2つしか無かったので、少しだけ満点と差をつけてみました。
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著者の名前は知っていたが、小説は初めて。
この本の前に翻訳した「鳥とけものと親類達」を読んだのがきっかけ。
訳が好ましくて流れ着いた。
その前に森見登美彦の「夜は短し歩けよ乙女」に出てきたのがきっかけ。で、この本を読んだのも偶々。
こういうつながりは面白い。
池澤夏樹、名前が村上春樹に似ているし、文章もどこか似ている。他の人も多々言及しているようだが。
本書に掲載されている2つの中編、「スティル・ライフ」も「ヤー・チャイカ」も共に大変好ましい小説である。