紙の本
人間としてショックだった
2001/09/08 21:21
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:まさとし - この投稿者のレビュー一覧を見る
初めてこの作品に出会ったのは、もう四半世紀位前の高校1年ころだったと思う。軽井沢が舞台でずっと霧に包まれた世界の話だった。まだ子供だったかもしれないが、作者が「避暑地の猫」を通じて何が言いたかったのか判らなかった。ただ自分の心の中にも大きな霧が立ちこめて、知らない世界を知った。
2回目に読んだのは19歳頃、3回目は34歳頃、そして4回目は40歳になった時に読んだ。いつ読んでも心に大きな感銘を受けてしばし呆然とする。いつも宮本輝と戦いだ。生涯彼の作品と戦いだ。はずかしい話だが40歳になって初めて作品の内容と「この猫」が何かが理解出来た。でも一生読んでも面白い作品だと思った。これからも宮本輝と戦っていく。
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清澄に軽井沢の広壮な邸宅の一隅に地下室がある。そこでは全ての聖なる秩序は欄れ去り人間の醜い奥底に潜む無気味な美しさを湛えた悪魔が、甘い囁きを交わす。別荘の主人が門番の美しい母も、愛する姉とも関係していく。その事実を知った修平は殺意を抱く修平の尊敬する父も、美しい母も、愛する姉も、主人公である修平もそこでは怪しい光を放つ猫となる。これまでの宮本文学は弱い人や愚かな人は登場しても「悪が出ない、悪を描かない」作家といわれ来た。この本は新たな世界を覗いた気がした。
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清澄な軽井沢の一隅に、背徳の地下室はあった。そこでは全ての聖なる秩序は爛れ去り、人間の魂の奥底に潜む、不気味な美しさを湛えた悪魔が、甘い囁きを交わすのだ。尊敬する父も、美しい母も、愛する姉も、そして主人公の少年も、そこでは妖しい光を放つ猫となる。だが、この作品で猫とは何か―?
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高校生のときに読んで、再び今読んでみても感想は同じだった。タイトルの「猫」って結局何なんだろう?それぞれの登場人物の心に潜む悪を「猫」と表現したのだろうか。そんな悪=猫が次々に登場するこのミステリ小説の中でも、主人公の修平とその姉、そして父の3人は悪でありながらどこかに人間味が漂っており、読後も後味の悪いものではなかった。とりわけ、姉のクールな悪魔ぶりに隠された弟思いの配慮、そして、姿を消してからも弟を気遣う様子が何とも官能的で美しい。
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『ノルウェーの森』を彷彿とさせるけれど実際のところ遙かに人間の本質をついたお話しだね。どうしようもない悪、こういうのを書きたくなる事もあるのかな。人を殺すことよりおぞましいものの存在を。私は人間の作った法ではなく自分自身を成している法が自分を裁くことを知っているから善悪の基準は人とは違うはずだけど、罪を償いたいから懺悔するのではなく報いを受けたくないからしているのではないか。いつの間にか偽善者になってなかったろうか?二つの懺悔の違いははっきり意識しなくちゃずるっこだね。私の悪夢と人への裏切りはどうすれば解決する?人は他者の宿命を平気で眺めるくせに自分の宿命を見つめる視力をもっていない。悲しいことです。でも事実なんです。愚かは悪だ。ほんと、なくさなきゃいけないよ、この悪は。多くのことを知って感じて分かりやすい言葉で明確に人々に伝えていかなきゃね。それにしてもあのお姉さんのように美しい不思議な人って好きだわ。主人公よりもインパクトがあるというか、ま、主人公にとってそういう存在だから仕方ないんだけど。宮本さん自身も気に入ってる作品だってさ。読み終わってすぐ読み返したくなってしまう。久しぶりにそーいう本でした。'89
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なんとも、救いようのない話。なのに、なぜか魅力的な話(こんな経験絶対したくないけど)。ついつい1〜2年に1回くらいは読み返してしまう。
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宮本輝氏の作品。
彼の作品は絵画的というか、あまり人間の内部の汚さやエグさを直情的に描かない、という意味で好きだったのだがこの作品はちょっと毛色が違った。
エグい。悪い。汚い。醜い。
だが美しさは損なわれていない。そこが宮本テイストとでも呼ぼうか、不快感を覚えず最後まで読めた要因。景色の描写だけではなく、人間の汚さの中に同居する純粋さや泥水に侵された地面のほんの一点の清潔な部分、そういう部分が読み取れるからだ。
人生そのものをやっていくにはどうしたって多かれ少なかれ悪と善双方を上手に抱え込まなければいけない。生きることは辛く苦しい責め苦だ。生き抜くには覚悟が必要なのだ。極端な描写ではあったが、ところどころにそんな作者の意図は見え隠れしていた。
ドロドロ人間劇が好きな日本人としては、娯楽作品としてもまあそれなり楽しめるだろう。叙情的な筆は他作品と差がないが、テーマ的には異彩を放っている。同氏の作品中ではぼちぼちといったところかな。
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爽やかそうなタイトルから想像していたのとは、なんともはや、違いすぎでした。
解説者がドストエフスキーを引き合いに出しているのもとてもよくわかる、なかなかドロドロの人間模様が描かれています。輝さんの作品には珍しく悪人(大部分が)が出ているとのことです。
お金があるだけで幸せになれると錯覚しがちなのを、戒めてくれるものなのかもしれません。大金に目がくらんだあの約束から悲惨な事件へと続いたのだから。。
ともあれ、このような話にも後味を悪くするだけに留まらない結末をもってこれるのが、流石です。軽井沢イメージがダウンですが(笑)。
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ハラハラどきどきしながら一気読み。
最近ミステリーばっかり読んでいたので普通のをと思ったら、これもミステリーだった・・・。
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自分の読んだ宮本輝作品のなかでは
異彩を放つ作品。故に非常に印象に
残っています。1章を読んで続きが
気になって、止まらなくなりました。
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清澄な軽井沢の一隅に、背徳の地下室はあった。そこでは全ての聖なる秩序は爛れ去り、人間の魂の奥底に潜む、不気味な美しさを湛えた悪魔が、甘い囁きを交わすのだ。尊敬する父も、美しい母も、愛する姉も、そして主人公の少年も、そこでは妖しい光を放つ猫となる。だが、この作品で猫とは何か―?
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一人の男の15年前の独白
別荘番の子に生まれ…17才になるまでの軽井沢での日々。
人間の我欲、醜さ、弱さ…
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私にはちょっとさびしすぎる話だった。
宮本輝は めちゃ大阪テイストもしくはハイソなコンサバテイストの作品が好きだな・・・。
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うーん、どろどろした物語で読後感はよくないです。
憎悪、嫉妬、テレビドラマのサスペンスを見ているような・・・・。
人間の心の奥底に潜む悪が描かれています。
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この作者がこんなのを書くの?!という驚き。
生々しくて背徳感たっぷり。
軽井沢という爽やかなイメージの土地だからこそ、
内容のドロドロ感がより一層引き立つのかもしれない。