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ソログープ作
生来の露西亜デカダン作家と呼ばれた彼の作品は主に子供が主人公。
彼は子供を純真で怖ろしいものとみなしており、いずれも死の影がひそんでいる。
他、「光と影」「子羊」収録
岩波文庫
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大学の授業で「子羊」に出会った。
純粋な穢れ無き幼子の魂は、大人になり穢れを知る前に、天国へと旅立つ…
雰囲気は生々しく美しく、ぞくっとする。
確かにこれは一種の「おとぎばなし」だ。
ただ「おとぎばなし」という薄い綺麗な膜を1枚まとっているが、中はなかなか生々しい…ので、まぁ私なら子供には勧めない。
「おとぎばなし」という文学作品である。
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ロシアの小説家・詩人ソログープ(1863-1927)の四掌編。いづれも、無垢な幼な子を扱った、透明な絵本のような静謐な物語。作者は、未だ現実の汚濁に染まらぬ子どもを、その無垢が弱々しく死や醜悪と隣り合わせの儚いものであるが故に、一層愛おしんでいるようだ。
「かくれんぼ」母娘が、哀しい現実から隔されて、閉じられた羊水の中でたゆたっているような、短い幸福。少女レレチカが愛らしい。「白い母」"花と咲く日を待たずに凋れてしまつた"無垢な少女との初恋が、幼い子どもとの出逢いを通して蘇ってくる描写が綺麗だった。「光と影」現実ではなくその影のほうに魅せられていく少年が印象的。現実から疎外された少年の姿がうまく描かれている。「小羊」僅か五頁ほどの中に表わされる子どもの無邪気さが、鮮やか。
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暗く少し湿った空間。そしてその光景は冷たい。それは決して寒いという感覚では説明できない、絶対的な冷たさ。まるで、凍土に覆われるロシアの暗鬱さを映し出す鏡のようだ。全ての登場人物の表情は、どことなく薄い寂しさに包まれている。それはまるで、火の燈らないランプのように静謐だ。総てが、深閑としている。あるのは光景、感情の冷たさと、どこまでも壁を隔てる、永遠ともいえる、停滞する寂しさだけだ。
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短編4編。
買ったのは2002年発行の第8刷だが「旧字・旧かな」のまま。
そのせいかどうか、薄い本にもかかわらず妙に重みがある……が、
柱(ページ上部の作品タイトル)が右から左へ読むように、
ぼんれくか
母い白
等と印刷されているのが微笑ましい。
で、読書は昔からいつも、
頭の中で自分にだけ聞こえる声を発して音読=傍目には黙読しているとしか見えない
方式なのだけど、
訳者の名調子が素晴らしく、朗読したい誘惑に駆られた。
ブランデーを垂らした角砂糖がじわじわ融けるように人の心が静かに崩れていくのが怖い。