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「半藤一利」のノンフィクション作品『聖断 天皇と鈴木貫太郎』を読みました。
『聯合艦隊司令長官 山本五十六』、『完本・列伝 太平洋戦争―戦場を駆けた男たちのドラマ』に続き「半藤一利」の太平洋戦争に関する作品です。
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聖断がくだり、そして戦争は終わった――。
連合艦隊の消滅、沖縄の陥落、広島・長崎への原爆投下、ソ連の満洲侵攻など、刻一刻と破局へと突き進んでいった戦争末期の日本。本土決戦が当然のように叫ばれ“一億玉砕論”が渦巻く中、平和を希求する昭和天皇と心を通い合わせ、二人三脚で戦争を終結に導いた一人の老宰相がいた。
その名は「鈴木貫太郎」。
運命の昭和二十年八月十四日、「鈴木」は御前会議ですっくと立つと、原稿はおろかメモひとつなく、語りはじめた。
八月九日の第一回の聖断以来の全ての出来事をよどみなく報告するのである。
そして最後に言った。
「ここに重ねて、聖断をわずらわし奉るのは、罪軽からざるをお詫び申し上げます。
しかし意見はついに一致いたしませんでした。
重ねて何分のご聖断を仰ぎたく存じます」
不気味な静寂がしばし流れた。
やがて天皇「裕仁」が静かに口を開いた――。
聖断は下り、戦争は終った。
徹底抗戦、一億玉砕論渦巻くなか、平和を希求される天皇と、国家の分断を阻止し、狂瀾を既倒に廻らす大仕事をなす宰相との感動の終戦実録。
昭和史最大のドラマである“日本敗戦”を描いた不朽の名作!
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「鈴木貫太郎」の人生、、、
日清戦争及び日露戦争での活躍、その後、聯合艦隊司令長官、海軍軍令部長等の要職を経て、侍従長として昭和天皇に仕え、昭和天皇から厚い信任を得た後、二・二六事件での襲撃による瀕死の重傷、そして枢密院議長を務めたあと、「小磯國昭」の後任として内閣総理大臣(第42代)に就任し、太平洋戦争を終結させる… という内容が以下の構成で描かれています。
・序章 八月十五日早朝
■第一部 日本海軍史とともに
・第一章 鬼貫太郎の突進
・第二章 水雷戦術の雄
・第三章 海軍最悪のとき
・第四章 大正から昭和へ
■第二部 大侍従長として
・第五章 「君側の奸」となる
・第六章 満洲事変から上海事変へ
・第七章 世界の孤児となった日本
・第八章 二.二六事件に倒る
■第三部 「破局の時代」にあって
・第九章 もはや日本に勝利はない
・第十章 最後の宮廷列車
■第四部 モーニングを着た西郷隆盛
・第十一章 至誠の仁人、敢為の武将
・第十二章 無条件降伏との戦い
・第十三章 本土決戦への道程
・第十四章 迫られる最後の決断
・第十五章 天皇と大元帥の間
■第五部 聖断ふたたび
・第十六章 ポツダム宣言と黙殺
・第十七章 天皇の決意に従う
・第十八章 日本が降伏した!
・第十九章 八月一四日午前十一時
・終章 じいさんばあさん
太平洋戦争を終結させることが、これほど大変だったとは知らなかったし、想像もできなかったですね。
本当に驚きました。
軍部や一部国民の戦争継続に対するモチベーションの高さは想像を絶するものでした… 現代なら、負け戦とわかった時点で、戦争継続なんて考えず、あっさりと降服してしまうと思います。
ある意味、これ以上はないほど理想的な意思統一(悪く言えば、マインドコントロール)ができていたんでしょうね。
そして、そのような状況下で戦争終結を完遂した「鈴木貫太郎」の生き方に共感するとともに、強い使命感と信念に基づく行動力と完遂力には見習うべきものがありました。
昭和天皇との頑強な信頼関係があったからこそ、昭和天皇との巧みな連携プレーで、困難を乗り切れたんだと感じました。
この人がいなかったら、どのような敗戦を迎えたのか、、、
ソ連が参戦していたことも考えると、日本本土は分割されていたかも… そうなると、現在の日本は存在していないわけですよね、想像するだけでも怖いですねぇ。
「鈴木貫太郎」が、二度に亘る昭和天皇の判断(聖断)を仰ぎながら、関係者の合意形成を図り、戦争を終結に向かわせる終盤は、何度も目頭が熱くなりました… 一人の日本国民として感謝しないといけませんね。
「鈴木貫太郎」の妻「たか」は、明治時代に、侍女として皇孫御殿で昭和天皇(当時は「迪宮(みちのみや)裕仁」)の育児に携わっているのですが、その際の育児方針は、
一、心身の健康を第一とすること
二、天性を曲げぬこと
三、ものに恐れず、人を尊ぶ性を養うこと
四、困難に耐える習慣をつけること
五、わがまま気ままのくせをつけぬこと
だったそうです。
現代でも、見習うべき内容ですね。