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18世紀のフランス。世界で一番敏感な鼻をもつ、においの天才である一人の男が、少女の体臭から香水を作ろうとし、殺人を繰り返す。
パリは多くの人が集まり、悪臭の塊だったという。その当時の町の様子やそこから発するにおい、人の体臭などが詳細に描かれる。
その真ん中で生まれた男は、生まれたときから鋭敏なにおいに関する能力を持っていたが、自身はまったくの無臭であった。それは周りの人の無意識下にも恐怖をもたらした。
彼は香水製造師となり、世界でもっとも愛される大衆を作り出すために、よい体臭をもつ少女に目をつける。
・・・一時期、映画化されて話題になったときは、非常に猟奇的なストーリーのようにいわれていたので、それを楽しみにしていたのだが。ちょっと期待はずれか。
話は主人公の内面にページを多くさいており、哲学的でさえある。舞台がフランスであるため、フランス人が書いたのだと思っていたら、ドイツ人だった。哲学的なのはそのせいか?(笑)
思ったより猟奇的ではないが、18世紀のフランスの様相とあいまって、一種異様なにおいの世界が描き出されており、ついつい没頭してしまった。
・・・韓国語で読んだため、細かすぎるにおいの分類なんかはもうギブ。
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ある人殺しの物語
突き放した副題に、エロティックな題名。
中世のヨーロッパでは衛生面が今とは違い、その為に香水が発達したらしい。
ハイヒールもしかり。
それはともかくとして。
匂い。
不思議なものですれ違いざまやふとした瞬間に漂う香りによって相手に好感や嫌悪感を抱くことがある。
多分はしょって云えばフェロモンに近いのではないか。
仕事が接客だったのでそのことは職場の女性達と盛り上がった。
容姿がそれほどぐっとこなくても、何故かムスク系の香りに弱いのよね
などと聞こえてくる。
この小説は、匂いを立体化して見る事のできる小説である。
主人公を通して語られる匂いの形や色、味。
さながら真水に一滴落とした墨のような様を映像を頭に送り込んでくる。
せむし男の生れ落ちた瞬間から死に至るまでの匂いの記録といったところか。
人殺しの物語ではあるが、淡々と綴られる文章は確かに物語でしかなく、だけども恐ろしいまでに匂いへの執着をここまで書ききった小説はあまりないのではないかと思う。
一息で読んでしまう吸引力をもった本。
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想像を絶する世界でした。本を開き、ページをひとつめくる間に、読者は行間からあふれ出す無数の「におい」によって 18世紀のフランスに引き込まれます。 それは煌びやかな世界でも、物語の予感に満ちた小説のような世界でもなく、 生きる人間のにおいが描く、何よりもリアルな18世紀です。
とにかく「におい」の勢いがハンパない。何処からどんなにおいがするか、この人間からはどんなにおいがするか、その表現だけで脳内にはパッと細部まで描写された映像が流れ出します。においのスケールはんぱない。そして主人公の天才っぷりがはんぱない。
とりあえず序盤で、えらいいいにおいがする女の子が出てくるんですが、気づいたら主人公と一緒にむさぼるように鼻をクンクンしていました。ほんといいにおいなんですよ。体の各部からにじみだすにおいが絶妙なバランスで調合された、ほんといいにおいなんですよ。
そして本を閉じた後ハッと我にかえるわけです。
私いま変態と同化してた。
そんな感じで変態になれる本です。嘘です。着眼点、そしてそこから描かれる世界のスケールに最後までびっくりしていました。
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2009.02. 最初はとっつきにくい文章かと思ったけど、のめりこむとおもしろい。各章毎にきちんと起承転結があるし、登場人物も生活に根ざした性根と、(ある意味)非常にいきいきとした心模様をしているし。主人公、グルヌイユは変態です。人間の心を持たないので、人間らしさがない。極悪人とかでもない、変態なんです。これは読まないとわからないかも。臭いがないというのは、恐怖なのですね。映画を早く見てみたいなぁ。ラストの映像化が怖いなぁ。
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文字というもので香りという五感の一つに訴えるものを
ここまで豊かに表現することができることができるなんて
信じがたい偉業。
香りそのもののが与える快楽と、それが人間にもたらす作用
の追求のみに生きる、粗野な野生児であり、天才の調香師であり、
悪意のない殺人犯でもあるグルヌイユの数奇な一生を描いた
文学史に残る名作!!
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初読:?
入手先:新古書店
読了感:えぐい。だが、引き込まれる。途中主人公と一緒になってこの香りを嗅いでみたいと思ってしまった。
映画にアランが出演すると知って読んだ作品。んだもんで、「これを映画化するのか!?」とちょこっとたじろいだ。
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●匂いの表現が秀逸。香りたつような文章だった。
●しかし、外国の小説ってのはどうも共感しづらい。
☆きっかけは八方美人な書評
読了日:2009/12/20
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18世紀悪臭に満ちたフランスで生まれたグルヌイユ。最初から悪意を持って生をうけた彼はどんな匂いでもかぎとれる天才的な能力を持っていた。
悪臭を放つ人間達の中で彼は一人だけ素晴らしい匂いを放つ少女を見つける。
究極の香水を作り自分のものにするためグルヌイユはあちこちを渡り歩きその素晴らしい香りを持つ稀人を殺し他の女性たちも次々と殺害していく。
訳者のあとがきの通り、奇想天外な物語。おもしろい。匂いがたくさん出てくる中、主人公だけが匂いがない。
ラストも衝撃的。
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読了は1989年冬。香り、という絶対に文字には表せないものを題材にした希有なる小説。滅多に小説を読み返さないのですが、これは何度も読んだ。読むたびに主人公の救われなさ、他者から「見えない」ということがどれだけ人間性を損なうのか、という悲哀が胸に迫る。
同著者の「ゾマーさんのこと」も是非併読を願う。
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今までで一番読んだ小説。 外人さんの小説ではゴッドファーザーとこれが一番好きなのです。映画にもなったけど、やっぱり本には勝てん。
Nirvanaの scentless apprenticeの歌詞はこの小説から。
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映画を観ていなかったら、読んでいなかったかもしれません。
私も五感の中では、嗅覚が一番敏感なので読んでいて、
“ゾクゾク”する作品でした。
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香水好きと映画化されたことがきっかけで手にした1冊。
終始一貫して不穏な空気が漂っている。
18世紀フランスという今よりもずっと香り・匂いが身近だった時代の話。
淡々としているがずっしりとしたやるせない思いが残る。
ラストの衝撃は忘れられない。
【鹿児島大学】ペンネーム:まるちゃん
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鹿大図書館に所蔵がある本です。
〔所蔵情報〕⇒ http://kusv2.lib.kagoshima-u.ac.jp/cgi-bin/opc/opaclinki.cgi?fword=21103054372
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とても面白かった!(と声高に言っていいものか。苦笑)映画化も果たした本書、恐ろしく優れた嗅覚をもつ男が主人公であることは知っていたが、それを武器にいったいどんなことができるのかと侮っていた。ものすごい物語だった。これは殺人の手記でありながら、孤独の物語でもある。主人公が俗人でなかったからこそ成し得たこと、また、得られなかったことを思う。身軽に行動できても、その中身が空虚とは、なんと寂しい。
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ずっと気になっていたのに読むのをためらっていた作品。
でも、読み始めたら止まらなくなってしまった。
グルヌイユの作る香水のように強烈に読者を惹きつける物語。
(最近の小説は、大量生産で万人受けの香水みたいだな、とも思ったり思わなかったり。)
悪臭から芳香までありとあらゆる匂いが書かれていて、当時の、匂いが充満したパリの様子が活字から伝わってくるよう。
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本が持つ「読ませる勢い」が半端なく強い。
香り、匂いという目に見えないものの表現力、語彙がすごい。
そしてラストも衝撃的…笑