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フリーダ・カーロ 生涯と芸術 みんなのレビュー
- ヘイデン・エレーラ (著), 野田 隆 (訳), 有馬 郁子 (訳)
- 税込価格:6,380円(58pt)
- 出版社:晶文社
- 発行年月:1988.12
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紙の本
「絵」以上には語れていない——『フリーダ・カーロ太陽を切り取った画家』(ローダ・ジャミ著)も併読
2003/10/28 20:28
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投稿者:とみきち - この投稿者のレビュー一覧を見る
芸術家の評伝は、描かれる人間が個性的であればあるほど、エピソードに満ちていればいるほど、エネルギッシュであればあるほど、一つの切り口で切り取ることが難しく、網羅的になりがちである。ジュリー・ティモア監督の映画「フリーダ」を見て、フリーダ・カーロの生涯がどのように描かれているか興味がわき、2冊の評伝を読んでみた。
フリーダを語るキーワードは、おそらく誰が挙げても大きく変わらないと思えるほど、その47年の生涯には人並み外れた事件が多い。メキシコに生まれ、10代の終わりに交通事故に遭い、その後遺症に生涯苦しむ。天才壁画家ディエゴ・リベラとの結婚。画家としての出発。シュールレアリスム画家としての世界デビュー。トロツキー、イサム・ノグチらとの恋愛などである。
『フリーダ・カーロ 生涯と芸術』は、そのボリュームに圧倒されるが、フリーダの生涯のありとある出来事を時間をたどって軽重をつけず客観的かつ克明に綴り、またその作品の誕生の経緯と解説をふんだんに盛り込んだ、大変な労作である。創造性や作品としての完成度には不満が残るが、それを我慢しても読む価値のある資料や考察に満ちている。
一方、『フリーダ・カーロ 太陽を切り取った画家』は、フリーダを一旦自分の中にイメージした上で、一人称の形式も取り入れながら描いている点で創造性は感じられるものの、やはり網羅的である点は否めず、女性あるいは画家としてのフリーダを描き切っているとは言えない。
フリーダの絵を見ると、モチーフに自画像の多いことに気づく。また、心安らぐテーマは少なく、常に命、血、セクシュアリティーなどのテーマがストレートに、説明的に表現されている。その背景には事故によるさまざまな心身の苦痛があることは明らかで、その絵を読み解くために、絵の背後にある生涯を最初から追う形式を選ぶことになるのもうなずける。
しかし、フリーダを知りたければ、何よりもまず絵を見ることだろうと改めて思う。心身の絶え間ない痛み、生への執着、孤独な心は、彼女の伝記を読まずとも、その絵を見れば強烈に伝わってくる。そこから何かを感じない人間は、幾らその生涯についての知識を得ても意味がない。
その絵を、その人生をより深く理解するための手助けとして、史実を知っておくこと、メキシコの社会情勢を知っておくことはもちろんむだではないという意味で、この2冊には価値がある。しかし、あくまでもフリーダを知るための副読本としての位置づけに終わっており、絵から感じられる以上のインパクトを与えてくれるほどに著者独自のフリーダ像が屹立しているわけではない。
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