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「港」という視点から、様々な国や都市の発展を考察していく本である。古代から現代まで、世界中の港に関する記述があり、情報量は膨大である。個人的に港を通じた物流、貿易などには大変関心があったので、楽しく読むことが出来た。
ギリシアやフェニキア、カルタゴの時代から、人々は海を通じて植民し、新たな地を開拓し、交易を通じて発展してきた。ベネチア、アムステルダム、ハンブルグ、アントワープなど、有名な海洋都市の中には今も栄えている都市も多い。
振り返ってみれば、海は間違いなく、繁栄の道であった。特別な資源や広い領土を持たずとも、海路を押さえ、海上貿易を活発にすることで、彼らは豊かな生活を送ることが出来た。商業と海運の繁栄によって1000年続いたベネチア共和国がいい例だろう。港とは海上交易の中継地点であり、最も繁栄する市場である。その地を押さえることは、どれほど重要であっただろうか。
海路は危険も大きいが、その見返りは陸路よりも圧倒的に大きい。しかし、造船技術や航海技術の進歩によって航海が安全に、そして少人数でできるようになると、その国や都市は莫大な富を手に入れることが出来た。海の道、川の道はまさしく富への道だったのである。
・カラベルはエンリケ航海王子時代に開発された画期的な帆船。それまでの船は遠洋ができず、操舵に多数のこぎ手が必要だった。カラベルは風の力だけで進むことができ、少人数で取り扱うことができた。バルトロメウ・ディアスやコロンブスの船もカラベルだった。
・ポルトガルのセウタ占領1415年から、1487年の喜望峰の到達までは70年近くかかった。そこから東側海岸はアラブ人商人世界であり、カリカットまではすぐに到達できた。
・コンスタンチノープルは交易の中心地として栄え、多くの国から通貨が集まり、ここで両替商が登場した。それが後のベネチア、フィレンツェの銀行業につながった。