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紙の本
幸せで爽快な野球小説
2001/01/22 06:00
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:藤井幸介 - この投稿者のレビュー一覧を見る
大リーグで往年の名投手を父親に持つ,赤毛でそばかすの女の子が活躍したらどうするよ,という,冷静に考えればまるで他愛のない話。問題は,他愛ないことなのではなくて,読んでいる間はまるっきり冷静ではいられないってこと。
主人公のレッド・ウォーカーは女性であるがゆえに,言われない誤解や偏見と立ちむかわなければならないハメになる。チームメイトから総すかんを食うわ,相手チームは試合放棄するわ,偏見に凝り固まったコミッショナーには付け狙われるわで,えらい目に合うんだけど,負けず嫌いでお天気屋で映画マニアで野球が大好きなレッドは,監督やファンを味方につけて,左手一本で強く明るく美しく道を切り開いていく。大人になりかけてて好奇心のおう盛なレッドは,ちょっときわどい遊びにも手を出すし,恋もする。
温かみのある語り口,ありきたりだけど巧みに彫琢されたキャラクター,スポーツライターとしての確かな目に支えられ生き生きと描かれた試合シーン,ハッピーエンド以外は絶対にありえない,という盤石の安定感。1から10まで用意されたエンターテイメントの王道。とにかく上手い。
アメリカ人にとってメジャーリーグとはなにか、ってことも少しわかるような気がしてくる。
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