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蘇聯のスパイであるゾルゲと共に、当時の日本を日支全面戦争不可避のところまで追い込んだ張本人とされるのが作者の尾崎秀実。その目的は日本をとことんまで追い詰めて崩壊させ、蘇聯を護り、共産主義の拡大を図ること。44歳の若さで検挙され、死刑。この本は1939年に発刊されたもので、その二年前には国民党蒋介石政権をこきおろす論評を行っていて、その中に既にこの本の主題とも言える半植民地性と半封建性という文言が見えているらしい。
評論家としてではなく実際の諜報活動員として、明確な目的を持っていただけに分析は非常に徹底していて、且つ近衛内閣のブレーンとして政府、軍部ともに交流があり、中国共産党とも国民党とも繋がりがあるという立場から蒐集された情報が大変に生々しい。
毎回この本を読むたびに、どんな思いで執筆にあたっていたのかと想像し、Wikipediaで共産主義について調べ出し、脱線が過ぎて読み終わるまでにしこたま時間を喰ってしまう。
自分が二倍の米寿まで生きたとしても当時の尾崎秀実のレベルまで到達できる気がしない。