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売春の歴史はそのまま、社会の中での女性の地位の変遷の歴史であり、男女関係の歴史でもある。−という事で、読んでるうちにだんだん腹が立ってきます。古代あたりはへーってな感じなのですが、キリスト教が世界の思想のバックボーンになり始めるあたりから怒りがこみ上げてきて…
今もたいして状況が変わっていないと思えるところがとても痛いです。
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古代からの売春の歴史についてまとめた本。
19世紀のイギリスでは、梅毒感染を避けるため上流階級では処女の売春婦が望まれ、下は3歳からいたそうだ。もちろん誘拐されたか親に売られたかのどちらかで、行為の前にはクロロホルムをかがせておとなしくさせていたらしい。
売春は時代によりいろいろな理由でうとましがられる。聖書にそむいている、性病のキャリアである、犯罪組織の資金源である、治安が乱れる、少女たちが不当に傷つけられるなど。それでも、なんの身よりも技能もない女が体ひとつで生きていくための唯一の商品が己自身であるなら、古代からあってもおかしくはない。
作者の結論として、売春問題(そもそも何が問題なのかというところから議論百出だが)の明白な解決と思われるのは、大人が合意の上で行う性行為を金銭の授受のあるなしに関わらず合法と認めることであるとしている。作者は前文からも売春に批判的であることは明らかだが、結論が売春の合法化と言うのは面白い。生存本能に根ざした行為を非合法化することはやはり無理があるのだろう。
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[ 内容 ]
売春の歴史はそのまま、社会の中での女性の地位の変遷の歴史であり、男女関係の歴史でもある。
豊富な資料をもとに、売春と各時代の婚姻制度、性道徳、女性イメージなどとの関連を通じて、売春問題の本質に迫る。
[ 目次 ]
第1章 売春の起源
第2章 古代オリエント―聖と俗
第3章 ギリシア人―ポルノグラフィーと性への怖れ
第4章 ローマ人―アンビヴァレントな感情
第5章 キリスト教、イスラム教と性道徳
第6章 インド、中国―もうひとつの見方
第7章 中世ヨーロッパ
第8章 宗教改革と梅毒
第9章 王侯と平民
第10章 統制と現状維持
第11章 アメリカでは
第12章 医学とセックスと女性
第13章 廃娼運動と法律
第14章 変わりゆく二重規範
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
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売春:女性が報酬を得ることを目的として不特定の相手と性交すること。
売春――性風俗産業の歴史とはすなわち、社会における女性の地位と性の変遷、そして男女関係の歴史でもある。悪のイメージが付きまといつつも、現代まで廃れることなく続いてきた理由とは。
豊富な資料をもとに、古今東西における売春と各時代の婚姻制度、性道徳、女性イメージなどとの関連を通じて、売春――性風俗産業の本質に迫った好著。原著の発行年は1987年と30年以上も前だが、その内容は色あせていない。特に後半、フェミニズム思想による欧米で発生した廃娼運動の変遷は、特に日本では、アダルトビデオや非実在青少年を用いた性表現に対する排除運動に引き継がれている。そしてそれは悪い側面――当事者の意思を無視した完全排除論や性表現に対する極めて個人的な排除思想を多数派にしようとする便乗者など――もだ。
本書は結論として、性風俗産業の国による管理推進、そして完全排除は悪手であり、こと性に関して不幸な女性を増やすと訴えている。ではどうすればよいのか――というのは、ぜひ本書をお読みいただきたい。