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昔読んだ本や座右の本、好きな作家の本や困った時に読む本、きれいな本や怖い本などなど、期限に追われて読む必要のない自分の本を好きなだけ持てたら最高なのですが、経済的・空間的理由でそれはままなりませんし、家が本だらけになるなんて困るということで周囲の理解を得るのにも困難が付きまといますが、実はそれが出来たら私たち本好き人間の最大の幸福なのかも知れませんね。
何度夢見たことでしょうか、大きくなったら荒俣宏センセのように、一回に何千万円も使って本を買うんだ、きっと、なんてね。・・・でも、それはいまだに夢のまた夢。
だからこそ、図書館の存在理由は多大なるものがあるという訳ですが、それもこれもひっくるめて、今回は、その、本の生涯というか、本の運命を考え込んでしまった体験です。
この本の裏表紙には、下記のように表示された特別のシールが貼ってあります。
フクロウのイラストを従えて・・・・
リサイクルBOOK
(除籍済)
中央区立図書館
見知らぬ旅行先でも、時間があれば探して飛び込むほど図書館好きですが(それが外国でも)、この本は、何年か前に東京で少し暮らした時、あちこちの図書館を訪ねた一軒の内の日本橋図書館で、いらなくなった本です、ほしい方はお持ち帰り下さい、という催しがあったのでいただいた本です。
裏表紙を開くと昔懐かしい図書カードがあり、「かえすひ」という張り紙に日付のスタンプが11個押してあります。
確かに1991年から99年まで借りて読む人はいたようですが、その後4年以上もないから、司書の方が不必要と感じて廃棄処分にしたのでしょうか。
私にとっては、たいへんありがたい話で、大好きなシモーヌ・ヴェーユの新たな本が無料で手に入ったということで喜ばしいことに違いはないのですが、なんだかしっくり来ません。
でもその時は、貰ってうれしくて詳しい訳を聞こうともしないで立ち去りました。
本書は、編者のクロード・ダルヴィという女優が、シモーヌ・ヴェーユの生き方に深い衝撃を受けて、その思想と生涯を演劇化して、この本の出た1991年には300回の上演を果たした話題の戯曲を中心に、編訳者の稲葉延子が、兄アンドレ・ヴェーユの「妹シモーヌの思い出」というエッセイや、吉本隆明の「ヴェーユの現代性」と題するインタビュー、それに先生だったアランをはじめボーボワール・トロツキー・カミュ・ヴァレリー・バタイユ・ブランショ・ソンタグなどの寸評も合わせてまとめた相当ユニークな本です。
これは、ひょっとして存在すら知らなかった私のために、図書館にはうっかり2冊買ってしまってあるから1冊は不要とばかりに、ちょうど私が来ることを予想して置いておいて下さった、な訳ないでしょう。