投稿元:
レビューを見る
「人間が経験する物事を、言語は言い表すことができるが、たった1つの言語でカバーできる範囲はとても狭く、私たちの生活のすべてを言い表すことはできない。私たちの生活はそれ以上に芸術的で、感情的かつ知的なものである。私たちの世の中は急速に変化するが、1つの言語はそれについていくほど速くは発達しない。よって、私たちは、1つの言語では表現できない新しい経験を表現していくために他の言語から言葉を借りるのである。すなわち、バイリンガリズム社会で多くの言語を使っていけば、どんどん多くの感情やアイデアを表現することができるのである。」(p.29)異文化の接触による文化の発達というブラーシュの考えに通じるものがある。異言語との接触による言語の発達というものがあるとすれば、それをうまく表現している。
「しかし、帰国生のバイリンガリズムに最も障害になっていることは第2言語保持のためのプログラムが学校に存在しないことである。帰国生のバイリンガリズムを保持育成するために学校での言語環境を整えることが大切なのは、社会や家庭で日本語以外の言語に接する機会が十分にないからである。第2言語保持のための環境整備が必要だという認識が具体的なプログラムの開設に結びついていないのは残念である。」(p.72)留学生の受け入れはそのプログラムでありうる。インターネットを介した遠隔授業もそのプログラムの一つとなりうるのではないか。