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「食の仕事」のセミナーのまとめ。フードジャーナリストが、何を考えているのかを知りたかった。
講談社女性誌『ソフィア』編集長 大平弘。
日本の料理は、「食と器」にこだわる。それは、桃山時代にさかのぼり、千利休の時代に、古田織部が、茶器、鉢や皿などを瀬戸、美濃、伊賀、備前、唐津に注文して作らせた。そして食事の時に、リズムをつけて、季節感を味あわせ、食と器を愛でさせた。食を演出したのが古田織部だった。
それを、掘り起こし、受け継いだのが魯山人。魯山人は元々は書家であったが、絵画、篆刻、そして陶芸も手がけた。星岡茶寮で食と器を、皇族、華族、政治家、文人たちに提供した。昭和12年から15年の料理人、松浦沖太から、どんな料理だったかを聞いた。松浦沖太は、謙虚さと優しさを持った料理人だった。魯山人は傍若無人で人を人と思わない性格であり、それが一種の芸術家の資質ともてはやされた。妻は4人いた。料理は素材を十分に生かした料理で、あまり手をかけない、演出が非常にうまかった。星岡茶寮の料理の特徴は、京料理、金沢加賀料理、中華料理のミックスだったという。魯山人に影響を与えたのが金沢の油問屋の細野燕台。
細野は、自分の家で食事をするときの器は、自分で絵付けしたりして作り、自分で作った料理を盛った。そこに居候していた魯山人はそれに感激して、自らも始めたという。
大平弘は、4百年周期説をいい、1590年代に桃山文化、千利休や古田織部が現れた。1190年代に鎌倉時代初期で釉薬をかけた陶器が現れた。790年代に奈良時代で、奈良三彩と呼ばれる色のついた陶器が現れた。390年代に土師器、素焼きの器(800℃で焼く)が作られた。その後須恵器(1000℃で焼く)が作られた。紀元前100年前後は、弥生式土器だった。400年毎に器の革新的な技術ができた。
なるほど、この説はおもしろい。
小説に出てくる料理を、イメージを膨らませて作ることで、もっとわかってくる。
マガジンハウス『Hanako』編集長 椎根和。
椎根和は、1942年生まれ。『日刊ゲンダイ』『ポパイ』『オリーブ』『週刊平凡』『Hanako』『リラックス』などの創刊編集長。
『Hanako』は、東京首都圏に限定販売。東京駅から140キロメートルの範囲内に限定。地域雑誌(リジョーナルマガジン)3000万人の東京人口で、20代の女性が300万人。Hanakoは最盛期は35万部を売った。20代女性を主要読者とした、食生活を中心とした生活情報誌。普通の感覚のレストランガイド。1988年に創刊。社会現象としてHanako族を生み出す。テラミス、ナタデココブームを作る。
日本放送出版協会『きょうの料理』編集長 川島祐子。
『婦人百科』『きょうの料理』『きょうの健康』に携わる。『きょうの料理』は、ちょっとダサいが、台所で使える雑誌を目指す。テレビと本と台所が繋がる。あくまでも、料理は手作りとする。大切にしたい日本の食の文化を底辺に持つようにする。「この土地、この味」と言う企画も続けた。健康と料理を結びつけた。大切なことは、「暮らしのまん中に食卓がある」
日本テレビプロデューサー『3分クッキング』中村寿美子。
���3分クッキング』は、1962年から始まっている。来年で還暦を迎える。すごい長寿番組。私も時たま見たりする。とにかく、手際がいい。テレビで映りがいい料理人と本にする時に言葉が上手い人は違うようだ。説得力の違いというのは、重要だ。「頭が良くて、弁が立って、まくし立てる」はいらないという。厚生省が食品30品目食べようと言っていたが、無理だから、七味唐辛子をかけて、それで7品目にする。いや。お茶目だ。料理の作り方だけを紹介するだけでなく、情報の先取りをする。良い番組とは情報だ。次にドラマ性がいる。素材のキャラクターを考えて、調理法と調味料の出会いを考えて、食生活の流れという情報を加味して、ドラマに仕立てる。あくまでも、作り手の奥様の味方になる。
女子栄養大学出版部『栄養と料理』編集長 下条洋子。
1935年に「健康を育む食を提案する」ことをテーマに創刊。香川綾が主宰者。1968年に、女子栄養学園の卒業生である岸朝子が45歳で編集長に就任し10年ほど編集長をつとめた。そのころの雑誌のコンセプトは「病人を出さないための食事」だった。
『やせるローカロリー食』という香川式食事法、今は4群点数法(魚1、豆1、野菜4)と呼ばれている。毎日の食生活が健康を作る。摂食障害、神経性食欲不振症、なぜそのようなことが起こるか?料理の作り手の側に立った家庭料理を提案していく。
食生活・健康ジャーナリスト砂田登志子。
今の時代は、誰もが情報を食べ、情報を飲み、情報を味わう。モデルのない時代にいき、毎日が「お祭り食」を食べている。「祭日食症候群」ジョンホプキンス大学栄養学者バーバラ・ローズが提唱。
飽食、過食の問題が深刻、「小児成人病」が起こっている。
バレンタインのチョコレートですら、健康志向、ダイエット志向、ウエルネス志向になっている。
「バレンタインには、チョコよりキスを」
「祭日食症候群」「小児成人病」に対して、フードファイト(食戦)を挑む。何に対する戦いといえば、成人病、がん、糖尿病にならない食生活をする。「ダイエットではなく、運動しよう」を呼びかける。ビジネススタイルが、立業ではなく、座業になっている。フードセフティ、フードチョイスが求められる。「キッチン・イン・ザ・キッド」(子供を台所に)デンマークでは、三歳児から始まっている。小さい時から、いい生活習慣をつければ、健康投資、栄養投資の配当が高い。
食育は、「なになにについて学ぶ」ではなく、「なになにから学ぶ」体験を通じて学ぶことだ。とにかく、「食べ物で勝負がきまる」のだ。
朝日新聞社編集委員村上紀子。
「飢餓から孤食までー食生活記者には書くことがいっぱい」
日本では、食や生活があまり取り上げられなかった。「おそうざいのヒント」というコラムを書く。「男子7歳にして厨房に入らず」海部首相が、「生活重視」を瀬性方針演説の中に入れた。「男子70にして厨房に立つ」という企画をやった。
うーん。どうも、健康に食のベクトルが向いてるな。健考、健幸へ。