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紙の本
ここ10年ほどで最も才能を光らせている若手絵本作家による、とっぽいキャラのロングセラー童話。新1年生にぴったし。年中・年長もいけます!
2002/01/25 10:43
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ(JPIC読書アドバイザー) - この投稿者のレビュー一覧を見る
シリーズで何冊か出ている楽しい童話。この巻は、たまたま表紙の写真がまだ掲載されていないようなので、『おさるのまいにち』『おさるがおよぐ』などで是非愛らしいキャラを確認してみてください。
「絵本作家」というのは夢のある仕事だけれど、なかなか食べていけないという話を聞きます。100冊ぐらいの本を出していて、そのうち何冊かが年に1回は増刷されるようなロングセラーでないと、ダメだそうです。雑誌や講師の仕事、出版でなく広告業界でのイラストの仕事などで補填して、まあ何とか…ということらしいです。そんな厳しい状況ですから、本来、絵本作家として立ってもいいというような才能が、ゲームデザインとかコミックの方へ行ってしまい、若手の作家が輩出する機会は少ない。また、これは受け皿となっている児童書業界の方にも問題があって、評価の定まらない新人作家が育っていく流れというものがほとんど見当たらないようです。
名前の通っている絵本作家というのは、だいたい50代以上。60歳前後の方の活躍が目ざましいのではないでしょうか。それはそれで素晴らしいことではあるのですけれど…。そんななかにあって、1957年生れのいとうさんは、ここ10年強、若手(といっても私と同じ40代)で最も精力的に作品を発表し続けている作家のひとりです。
まだイケイケムードがあった時代から、いとうさんの作品は、早春や小春日和の晩秋の野原で花摘みをしているようなおっとりとした、しかし着実なものを提示していたと思います(まあ、子ども向けの本ってそういうもの、そうあれかしと思いますが)。
でも、花摘みをしながらも決して自己陶酔に入っていかない、全体のなかの自分をしっかりと眺めている…といった姿勢が見受けられます。面白くてユーモアに満ちている。が、ナンセンスとは一線を画している、哲学する子どもの気質に寄り添っているというのが、いとうさんの絵本や童話の特徴ではないかと思います。
各ページに絵があって、文字は2行前後。しかもサイコロみたいに大きな文字で組まれたこの童話は、南の島に住むおさるの平和な日常生活を描きながら、代々のおさるがもったであろう悩みについて大笑いの展開があります。
おさるの子の耳を、ある日、かにがはさんでしまうのです。痛くはないので放っておきますが、おさるは自分だけ「かにみみざる」になった気がして落ち込んだり、妄想を抱いたりします。そこで、みんなの耳にかにをくっつけようとしますが、他のかにたちはすぐに耳から離れてしまうのです。「ぼくひとりだけ」とおさるは悩みます。でも、おじいちゃんの話を聞くと、おじいちゃんは「たこしっぽざる」で悩んだようだし、おじいちゃんのおじいちゃんも同じような悩みがあったということ。そうこうするうちに、おさるの耳にくっついていたかには…。
ペンによる黒い線だけの挿し絵、ペン画に色鉛筆(パステルかな?)で彩色した挿し絵、アクリル絵の具か何かでくっきり描かれた見開きページのインパクトある画…と3種類の絵の描き分けも効果的で、ワザあり。淡々と無愛想に読み進める方が、子どもには受けるみたい。
紙の本
おさるはおさる、ぼくはぼく
2004/09/26 18:22
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:亜李子 - この投稿者のレビュー一覧を見る
最近の某科学雑誌に掲載されていた大人と子どもの時間の流れ方についての記事を流し読みをした。自分も例に漏れずだが、「子どもの頃の時間は早かった」「あっという間だった」と云う人がいるが、それは比率の問題らしい。六年間生きたうちの一年と、六十年間生きたうちの一年は、六分の一と六十分の一である。子どもの頃の一分一秒のほうが、長く生きた大人の一分一秒に較べれば随分大きな割合なのである。
勿論経験の差も歴然である。何かが起こったときにどう対処すればいいか、その経験を以って判断するだろう。然し、子どもはその経験とやらを大人に較べて積んでいない。「こうすれば簡単だろう」「決まりきったことじゃないか」ということがないのだ。それを行ってどんな結果が生まれるのか、いつでも解らない。そんな時分にどうしたら良いか解らないことが我が身に降りかかったら、途方に暮れてしまうだろう。
今回のおさるの「ぼく」には、そんな困った出来事が降りかかった。あることによって今までの「ぼく」と今の「ぼく」は違ってしまった。更に、他のおさるとも「ぼく」は違う。色々悩んで様々なことを試みるが、どうしてもうまくいかない。そんなところにおじいちゃんがやって来て、自分にも同じようなことがあったと話してくれる。流石は亀より年の劫のおじいちゃんである。「ぼく」の不安はいつの間にか薄れていって、そしてある日元の「ぼく」に戻っていた。
実際に読んでみるととても面白おかしく感じるのだが、「ぼく」にとってはとても真剣な悩みなのである(真剣に悩んでいるところがまたおかしいのだが)。そんな悩みを一笑に付さず、ちゃんと聞いてあげたおじいちゃんはすごい存在だと思う。子どもはそんな風にいつでも真剣である。ならば、それを聞く大人も真剣になるべきであろう。
紙の本
みんないっしょ
2017/06/29 06:25
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nabe - この投稿者のレビュー一覧を見る
耳にカニがくっついて、僕一人だけになってしまったような気がしたおさるですが、おじいちゃんもそのまたおじいちゃんも困ったことがあって、ぼくと同じだったと気づきます。
おさるはおさる、ということから、自分自身も自分と同じように暮らしてきた家族やご先祖さまがいて、みんな一緒だったんだろうなと気づきます。困ったことがあっても大丈夫、そんなことを感じさせてくれる本です。