紙の本
同じ地球人として
2007/04/04 19:42
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:りっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
なだいなだ氏と、17年前に社会主義を半分くらいは正しいと信じていて、今は胸の真ん中にポッカリ穴があいてしまったというA君との対話。
二人は人をまとめる原理と、その裏返しの人を排除する原理について考えていきます。地球儀を間に置いて・・・
なださんの博識と独特の整理で、色んなことがすっきり理解ができたようだよ。
人間と類人猿との大きな違いの一つが犬歯だって知ってた?肉体的な武器を一切持たないのが人類。肉体的に強い種のオスは、発情期になると他のオスと争うでしょう?でも人間は性欲もコントロールし、結婚も集団に認められる永続的なもの。争うことが無用となり、男同士も協力できる。それでマンモスのような大きな獲物も捕らえることができるようになった。すごいなぁ。
で、衝動的でもなく、血が濃くなる心配もない結婚の方法が、親が決める結婚。近親結婚にならないように、違う血族ともお付き合いが必要だから、血族関係だけを大事にするのとは、まったく違うのだけれど、血族を意識する。そうしてできた集団には、面倒なしきたりや上下関係を重視した言葉遣いなどがあって、結構緊張した関係。お互いの小集団の無駄な攻撃性をガチッと押さえ込んでもいた。個人としてはがんじがらめ?でも、それなりに集団をまとめるシステムとしては良くできていたのかもしれないねぇ。
日本なら、縄文から弥生への変化。定着した農業は、食糧の増産ができ、巨大な集団ができ、専門の戦闘集団や行政組織も作られる。文字もできて記録に残る歴史が作られる。熊襲や蝦夷は蛮族として記録され、女神が先に口をきいたから変な子が生まれたと言いがかりをつけられ、大和民族は天照大神の子孫ってことになっちゃった。日本の近代化にこの神話が利用されたのね。
ローマ帝国にはキリスト教。宗教もいいけれど、「神はこう言った。だから文句を言わずに従え」的に使われたらたまったもんじゃない。
日本は国内の悲惨を国家の枠内で解決しようと悲惨の輸出つまり侵略をしたのだわね。最終的に、それにのっかった日本国民も、侵略されたアジアの諸国民も辛酸をなめたのだよねぇ。
なださんは「戦争は平和を持ちきたすために行われた」って。口実にせよ、そうでも言わなくては誰も殺し合いなんかしないものね。狩猟型部族なら、地球が広い頃は、逃げるだけで良かったのに、定住型になると戦いも残酷になったそうだよ。今はもっとだねぇ。核も生物兵器も特にアメリカに一杯あるし・・・
ホロコーストのおかげで、ユダヤ人も苦労したけど、「ここは自分の土地だ。2千年前に祖先が住んでいたと聖書に書いてある。どいてくれ」とは御無体な!!ユーゴ紛争についても分かりやすく書いてある。
なだいなだ氏は、「宗教も、ナショナリズムも、社会主義も、人をまとめる原理としてみてみよう。どれもみな未来を約束している。希望を与えてきたのさ。宗教はこの地上を越えたところに理想社会を。ナショナリズムはその中で一人一人が平等な自分たちの国を約束してくれた。そして社会主義は、国境のない世界、差別のない世界を、みな未来に約束してきたんだ。約束は未来にしかできなけどね。しかも、その社会を、自分たちが参加して、力を合わせれば作り上げることができる、という約束だった」「戦争は民衆の視点からもっと大きな悲惨を生む。その視点を持つことができたのは、社会主義者だった。・・・百年以上も前に国際化を行っていたのが社会主義者たちだった。こう考えれば社会主義を粗大ごみにしてしまうのは惜しいだろう?」という。うん、公害問題だって、環境問題だって、差別問題だって、そういう視点がないと解決できないよね。
みんな“同じ労働者”というくくりではなく、みんな“同じ地球人”というくくりにしてくれれば、もっと私には、ぴったりに思える。地球を大事にしよう!
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ナショナリズム・民族・エスニシティなどに関する入門書としておすすめ
著者の立場に反対の人はいると思う。それはそれでありだと思う。
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民族はフィクションだという言葉のもと、何故人はまとまり、排除するのか。
自分の中の属性意識は「作られた当たり前」だということに気付かされた。当たり前は当たり前ではない。アイディンティティの存在と意味。
対話形式は最初は読みにくいけれど慣れれば逆にわかりやすい。とにかくおすすめ。
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人類はどうして生き残ったのか。
集団を作っていったことがキーとなり、
それに宗教も関係することわかっていく。
対談みたいな感じで進のだが、小説みたいでサラッと読める
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すごく分かりやすいけど、擬似対談形式が鼻に付くというかイラっとさせるのでちょっと読みにくい。リードしてい方向が偏っているのからそう思うのかも。
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[ 内容 ]
世界を激しくひき裂き対立させる民族主義。
どうそれを超えるかに21世紀の平和はかかっている。
こうした問題意識から著者は民族主義を「国家の宗教」であると把え、その克服の道をさぐる。
対話形式によるねばり強い思考実験の後にほの見えてくるのは、創造的・批判的精神としての社会主義の復権である。
『権威と権力』の姉妹篇。
[ 目次 ]
第1章 人間は集団を武器とした
第2章 血の信仰
第3章 部族から帝国へ血から言葉へ
第4章 イデオロギー
第5章 国民と民族
第6章 国の中の少数派
第7章 「同じ」意識
第8章 理性的批判主義
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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本を読んで、こんなに思考回路が変わったことは、今まで無かった。読み終わって、ちょっと怖くなったくらいです。
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民族というもの近代国家というものは虚像であるということを、対話形式で書いてある。対話形式の為比較的読みやすかった。
後半は社会主義の反省のようなもの。
人類が誕生してからどのように集団を作ってきたかということを時系列的(かなりおおまかではあるけど)がに説明。
民俗から民族への変化は共通の外敵を作ることによるものらしい。坂口安吾の堕落論を思い起こした。
多くの人に読んでもらいたいと思う。
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様々な民族の集合体において、国という概念が形成されるにあたり、共通言語がおおきな役割を担う。そのための教育が重要であり、これにより愛国心の素が築かれる。当然、誤れば危うい方向へ歩むこととなる。
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オススメ度(1~10): 8 前知識:不要 読みやすさ:◎
総ページ数:208p
国民国家を理解する上で最適な入門書。対話形式で書かれているため読みやすい。
第一章 人間は集団を武器とした
第二章 血の信仰
第三章 部族から帝国へ 血から言葉へ
第四章 イデオロギー
第五章 国民と民族
第六章 国の中の少数派
第七章 「同じ」意識
第八章 理性的批判主義
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対話形式で、民族とは何かという問いを考察している本です。
著者を訪ねてきた「A君」は、社会主義の崩壊とそれにともなう民族どうしの対立についての質問を投げかけます。これに対して著者は、人類の歴史をたどって、人間が集団を維持するために宗教や国家といったさまざまな装置を必要としたことを説明し、民族もそうした装置の一つだと語ります。
最後に、社会主義のイデオロギーも人びとの集団をまとめあげる装置であったにちがいないけれども、それが人びとの心をつかんだのは、産業社会の悲惨と国家のエゴイズムを克服する道筋を示したからだと説き、社会主義の有効性が否定された後でも、そうした問題を越えていこうとすることの重要性は変わらないはずだという考えが示されています。
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つむじまがりが考える民族、それから宗教。民族がどういうものかとか、宗教がとういうものか考えるには、今までにどういうものが民族あるいは宗教と呼ばれてきたか考える帰納的な方法に、民族あるいは宗教ではないものから民族や宗教を考えるという方法がある。
さて、つむじまがりの彼はどう考えるか。彼は、宗教や民族を必要とした側から考える。つまり、なぜ、それがなくてはいけないのか。民族や宗教が必要とされているという前提のもと、演繹的に考えていく。
内容紹介の見出しには粘り強い対話と銘打っているが、決して粘り強くはない。たくみに痛いところをかわして、対話という物語を形成している。ひとは集団をつくらずにはいられない、このことを認めたうえで考えれば、民族というのは必要とされた宗教だと論理的に言える。彼はこの限界点を自覚しておそらく書いている。だから、基本的にはおおざっぱでいいのだ。だってこれは物語だから。
なぜひとは集団をつくらずにはいられないのか、どうして集団をつくれるのか、この点に関しては触れられない。そして、民族が宗教だと言い切るのなら、なぜ国家や国民という考えを宗教だと言い切らないのか。彼はひとは集団をつくるということや国家というものを信じているからだ。「信じる」というこの一点については次作まで待たねばならない。
理由づけなどいくらでもできる。起きたことにはどうとでも言える。彼はよく知っていた。彼の見方に従えば、ユーゴスラビアの紛争はこのように見える。物語とは、ほんとうにあったかどうかなんて問題にしない。物語から得なければならないのは、批判精神だ。
社会主義は過去の遺物だと言うひとがいるかもしれない。しかし、社会主義が現に存在したという事実は誰にも揺るがさられない。社会主義の物語がある以上、なにがしかの見方があるはずだ。その物語を必要とした精神があるはずだ。それが批判だ。それをしないで資本主義万歳と社会主義を捨て忘れるのは「もったいない」。そんなわけで彼は「リサイクル」という批判を行うのだ。これが「抵抗」としての社会主義だ。新しい社会主義などでは決してない。それに彼は主義というものがただの信仰だと言い切っている。
決してこの対話は建設的なものではない。彼は決して革命家ではないからだ。いや、ひょっとすると、「書く」という行為でそれを成し遂げようと考えていたのかもしれない。もう彼の生きたことばを聞くことはできない。しかし、彼は、現実に社会主義がすたれて、資本主義といわれる世の中に生きているというその事実に決して耳を塞いでいない。その一点において常に彼はまっすぐなのである。要はそういう信仰との「おつきあい」としての対話なのである。
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人間の歴史(猿人~古代国家~ローマ帝国~近代国家~明治維新、ユーゴスラビア、ユダヤ人)を振り返りながら、集団として人をまとめる原理について考察されている。対話形式のため読みやすい。国家、民族など普段は考えもしなかったことだったので、知的興奮もさることながら、知らず知らずの内に作られた「単一」「同じ」という意識が私の中にも浸透していたのだなとハッとさせられた。
・血の信仰→言葉の信仰
・宗教が部族を越えて広まり、人間を大集団にまとめた
・国家にふさわしいのは国民という呼び名、その国家と人間とをどろどろとした感情で結びつけようとして用いられるのが民族というフィクション
・民族=部族意識を越えさせる新しい宗教
・産業革命、大きな市場がほしい→国家(ネイション)統一運動
・近代化とは、民族の神話を創造するための、民俗的なものの容赦ない切り捨て
・民俗は現実だけど、民族はフィクション
・日本人の単一化が進んだのは、日清、日露の戦争をきっかけにしてであり、更にそれが進んだのは昭和の軍国主義の時代
・「日本人」は作られたもの
・単一民族だとフィクションになる→単一化された国民
・近代化は単一化
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資本主義者だと思っていた自分の思想の行く末がわからなくなってきた…
ネイションの訳語、アメリカの構造的人種差別の存在について言及がなかったのは気になったが、大変示唆深く面白く読めた。
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【由来】
・「民族とネイション」のamazon関連本。
【期待したもの】
・ナショナリズムについてのシントピカルによさげ。
【要約】
・
【ノート】
・読みやすいんだけど、なかなか深い。
・人をまとめる原理/イデオロギーとしてのナショナリズムの発生・発達過程について議論されており、ちょうどマクニールの世界史を勉強し始めたというのもあって、そこそこイメージしながら読め進められたと思う。だからと言って、サラリと読んで、共通点を見いだせるほど「想像の共同体」は簡単ではなさそう...。
・終盤は社会主義についての話。既に没落しつつあった社会主義の美点として万国の労働者の連帯を掬い上げる。これは大衆を戦争へと向かわせるナショナリズムという、国家にとって都合のよいイデオロギーへのアンチテーゼとして有効であるという著者の信念をうかがわせる。
・出張時にどこかに置き忘れてて、bookoff onlineで198円で買ったら、あまり触りたくないような感じのボロボロのものをつかまされた。大学近くの古本屋で、程度のいいものが250円であったから、また買った。ちょっと自分にとってはいわくつきの本になった。