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おれは歌だおれはここを歩く アメリカ・インディアンの詩 みんなのレビュー
- 金関 寿夫 (訳), 秋野 亥左牟 (絵)
- 税込価格:1,760円(16pt)
- 出版社:福音館書店
- 発売日:1992/02/01
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絵本
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紙の本
歌っていたら、歌そのものに、なっちゃうんだ。
2009/03/08 23:00
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wildcat - この投稿者のレビュー一覧を見る
図書館で、表紙のKokopelli(ココペリ)、そして、『おれは歌だ おれはここを歩く』というストレートなタイトルに惹かれて手に取った一冊です。
ここには、アメリカ・インディアン(ネイティヴ・アメリカン)の詩が25編収められています。
ホピ族、メスカレロ・アパッチ族、エスキモー族(今は、イヌイット族と言われるほうが多いですね。)、ナバホ族、パパゴ族、ネズ・パース族、ズーニ族、ヒュイチョール族、テワ・プエブロ族、クワキユートル族、ハイダ族、トリンギッド族、チッペワ族、ピマ族、セネカ族、オマハ族の16の部族の詩です。
聞いたことのある部族もいれば、はじめて聞く部族も。
「おれは歌だ おれはここを歩く」は、ホピ族の『せむしの笛吹きの歌』で、ちょうどインディアン・ジュエリーを扱うお店で、ココペリ人形を買ったことがあったということもあり、とても親しみを感じました。
「おれは歌っている」じゃなくて、「おれは歌だ」。
歌っていたら歌そのものに、何かをしていたら、その動作や対象そのもに、すっとなれてしまうんだ。そんな気がします。
そして、動物は獲物でもあり、意思疎通できる相手のようでもあります。
「鹿がおれの歌声をきいてやってくる」のです。獲物なのですが。
おれは「フクロウ」にもなります。「黒い蛇」にもなります。
こがね虫の子供が背中で眠っているのを見たら、自分の子どものことを間髪いれずに違和感なしに、同じに考えられるのです。
詩とともにある絵、あるいは、詩なしの絵だけのページもひとつひとつが印象深いものです。
絵を描いた秋野亥左牟は、アメリカ・インディアンと生活を共にした経験があるといいます。
その、ときに細やかで、ときに鮮やかで、ときにダイナミックな世界は、彼らの生活そのもののを落とし込んだように見えます。
『守り神の歌』は、「腹ぺこのコヨーテがやってくる まっ赤な手 まっ赤な口 目球をつらねた首飾り」という詩なのですが、ここは、目球の首飾りをしたまっくろなコヨーテが、人の手のようなまっ赤な手を出して、まっ赤な舌を出しているのです。赤ってとってもコワイ色だったんですね。
著者の「アメリカ・インディアンの口承詩」に関する考察も読み応えがあります。
もっとも印象に残ったのは、エスキモー族の『魔法のことば』でした。
ずっと、ずっと大昔
人と動物がともにこの世に住んでいたとき
なりたいと思えば人が動物になれたし
動物が人にもなれた。
だから時には人だったり、時には動物だったり、
互に区別はなかったのだ。
そしてみんながおなじことばをしゃべっていた。
そのときことばは、みな魔法のことばで、
人の頭は、不思議な力をもっていた。
ぐうぜん口をついて出たことばが
不思議な結果をおこすことがあった。
ことばは急に生命をもちだし
人が望んだことがほんとにおこった。―
したいことを、ただ口に出していえばよかった。
なぜそんなことができたのか
だれにも説明できなかった。
世界はただ、そういうふうになっていたのだ。
そう、この詩たちは、魔法のことば、なのです。
紙の本
これはおとなの絵本だ。そして父が子どもに語り聞かせる本。
2006/04/13 10:28
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:りこのりこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
秋野亥左牟は、この詩に惚れこんだ。アメリカ・インディアンの詩。訳詩が素晴らしい。それに惚れて描いた画家の絵が息をする。ときに躍動し静止し、荘厳に華やかに優しく魂を揺さぶる。全霊をかけた絵がひとつひとつの詩に呼応して、インディアンの魂の詩を高らかに、静かに歌う。
ペンの一筋一筋が心を打つモノトーンの細密画。インディアンが空を翔る。黒い蛇が歌いながら旅をする。光り輝く角をもつ鹿。走る小路のまんなかで、吹く風のまんなかで休んでいる岩。寡黙なのに多くを語るモノトーン。
そして独特の色遣いが踊る彩色画には、光と風と匂いが溢れる。縞瑪瑙のような蹄をもつ、トルコ石の女から生まれた神馬の歌。たてがみをそよがせているこんなに神秘的な馬を私は知らない。緑が青が橙が異国情緒を醸しだす。なんという世界だろう。
私はこの本を誰にもゆずれない。魅せられてしまったから。でも子どもたちにだけは、1頁ずつそっと開いて、読んで聞かせよう。そして機会があれば、秋野亥左牟の原画展に連れて行こう。ペン先の紙を擦る音が聞こえる緻密に描かれた絵から、狼の毛並みや梟の羽の手触りを感じることだろう。異国で培われた独特の色に心奪われるだろう。彼の絵の前で立ち尽くしていた私のように。
「おれは歌だ おれはここを歩く」アメリカ・インディアンの鼓動がきこえる。胸が熱くなって、涙がこみ上げてくる絵本だ。
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