グーテンベルク聖書の行方 みんなのレビュー

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投稿者：オタク。　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

丸善が購入したグーテンベルク聖書の上巻を縁でグーテンベルク聖書を論じた本。バブル期には、こういう稀覯本も買えたものだ。
　初めての印刷本としてグーテンベルク聖書は有名でも、それを主題にして取り上げた本はまずないと思う。「語学のまったく不得手な」とあるので「現代英語、ドイツ語、フランス語」で書かれた本は協力者の手で訳されたものを参照したようだ。グーテンベルク聖書が生まれた背景や使用された活版印刷機、紙面に残った活字跡から類推した活字など読んでいて楽しい。
　「グーテンベルク聖書／現代ラテン語／日本語聖書　比較」という表がある。「現代ラテン語聖書」といっても新ウルガタではなく、ドイツ聖書協会が刊行している校訂本だ。また日本語聖書は新共同訳・旧約聖書続編つきだが、グーテンベルク聖書の本文はウルガタなので、本文の立ち位置はバルバロ訳かフランシスコ会訳の既刊分を使った方が比較しやすかっただろう。新共同訳のエステル記はBHSから訳されているので、「旧約聖書続編」のエステル記（ギリシャ語）の方が本文が近いはずだ。新共同訳やフランシスコ会訳の分冊では独立して訳されているエレミヤの手紙はバルク書の6章に該当する事やダニエル書補遺アザルヤの祈りと3人の若者の讃歌はダニエル書3章にある事は気がつかなかったらしい。