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日本人とは何か 下 山本七平 PHP
キリシタン禁止や弾圧の内容を見ると
「バテレンはその者の心次第たるべきこと」
「領主の改教や移動で領民を強制的に改宗させてはならない」とあり
むしろ仏法や神教を強制的に妨げない限りお構いなしと言うことで
逆に信仰の自由を保障している状態の場合が多かったようだ
長崎では寺や神社が壊され寺が一つもなくなり
すべてキリシタンの教会ばかりになった時期もあったと言う
その裏には他の存在を認められない一神教の思いがあるようで
領主がキリシタンになった場合領民もキリシタンにならなければ
居場所がなくなり街中が一色になっていくらしい
信長も秀吉も家康も政治に手を出さない限り信仰の自由を認めているが
一向宗のように領主と領民が一丸となる事を恐れていたこともあった
この本は実際に生きた人による日記や記録を掘り起こしたものなので
あらかじめ方向性を内に持って政治性は体面をつくろった洗脳書でなく
本質に近いドキュメント史といえるかもしれない
マスコミもマスメディアもその本質を置き去りにして
無責任な大本営発表に頼った嘘と建前のニュースになっている現在
こうしたものは見えにくく隠された本音を知る小さなチャンスである
さらに存在していても押し付けてくることがないから
こちらから積極的に探し求めて行かなければ出会うことができない
こうした出会いには感動が伴うし思いもよらない発見が待っている
江戸末期の藩同士の関係と国家間に置き換えると
明治や戦後の政治に似ていると山本氏は言う
その優れた面としては能率的な近代化による国家利益の擁護
国家独立の保持・平和外交に基づく経済発展擁護
欠点は政治に無関心で経済的繁栄だけを喜びとする国民のため
真の近代国家になれないこと
本多利明・海保青稜は戦争放棄による発展であり
戦後日本の原型とも言える
もし世界が幕末の幕藩体制のようになるならば
二人は世界の先覚者と言えるようになるかもしれないと結ぶ