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本屋で見つけて驚いて買ってしまう。山男の書く文章はいつも独特だ。生と死のはざまで、とても静かでナイーブである。
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「今日、わたしたちはビヴァークしない。星は、わたしたちの心の中で輝いていたのだ。」(p155)
良い表現が多すぎて多すぎて。
自然と仲間を想う気持ちを押し付けでなく与えてくれる作品。
そしてそんな気持ちを与えてくれるジャンルこそ、山岳文学なのだなと思えた。
「一本のザイルが二人の人間を結び、彼らは一つの生命になる。ガイドはこれから数時間、それまで知らなかった相手と結ばれ、その人は彼の仲間になる。二人の人間が最善と最悪をともに分かち合う時には、彼らはもう他人ではない。」(p9)
チマ・グランデとアイガーの北壁の章だけでも繰り返し再読したい。
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垂直の岩壁に清秋を賭けた名クライマー、ガストン・レビュファのグランド・ジョラス、マッターホルン、アイガーなどアルプスの6台北壁登行の記録。
それぞれが非常に難しい岩登りにもかかわらず、とても楽しそうに書かれている。
港町のマルセイユに生まれながら、アルパイン・ガイドとして功績を残した氏の生い立ちも興味深い。
古き良き時代の優雅な登攀が楽しめる。
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1954年に出版された山岳文学の古典。著名な登山家であるガストン・レビュファによるヨーロッパアルプスの6つの北壁の登攀記である。
まずは『星と嵐』というタイトルが詩的だ。北壁を登るためにはビヴァークが必要なので、星。長い登攀ではしばしば悪天候に襲われることから、嵐。訳者の近藤等さんによる解説*の中でその意味が明かされている。
沢木耕太郎の『凍』で描かれた山野井夫妻のギャチュンカン挑戦が2002年。レビュファのアイガー北壁**が1952年だから、ギャチュンカンのちょうど半世紀前になる。正にクラシック。
本書の登山はヒマラヤを無酸素で目指すようなものとは異なる。しかし登山電車の駅でパートナーと落ち合ったり、その駅までは自転車で行ったり(p108)というような、生活空間と山が一体になっている様子はとても魅力的だ。ヒマラヤでは到底ありえない身近さ。いつか麓の村だけでも行ってその一端を感じてみたい。
*「山のサン=テグジュペリ」と題された解説は、19ページにもわたる気合の入ったもの。巻末の年譜も充実していて、レビュファと同時代の日本を含む小登山年表になっている。(山野井妙子=旧姓長尾妙子のグランド・ジョラス登攀も記載されている)
**このアイガーの登攀には、ナンガ・パルパッドの単独登頂で有名なヘルマン・ブールも登場する。