- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
紙の本
誰もが持つ、虚実の世界。
2003/08/17 00:02
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:オレンジマリー - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の読後、私は心臓を巨大なハンマーか何かで思い切りガツンと殴られたような感覚に陥った。文字通り頭の中は真っ白になったし、胸の底で疼痛が走った。
氏家透。彼は自分のために人間を作り上げた。他者には決して見えないヒカル。性格は結構違っていたが、私にはヒカルは透の一部のように思えた。ヒカルが発する言葉や起こす行動は、透の脳裏に秘められたものなのだと思う。うまく説明できないが、そこに光と陰があるとしたら、透は光を、ヒカルは陰を主体としている。ヒカルが坂道にあった乳母車をとん、と押すところでそんなふうに考えた。実際は透がそうしたかったのではないのかと。
こんな経験はないだろうか。自分が選ばなかった道を、自分が歩んでいる想像をする。そこには紛れもなく「ヒカル」が居るのだ。なぜか立体的で、人間ぽくて、実在しないと言われたら得心してしまうような不可思議な人物。
伝言ダイヤルで知り合った子を信じてみたり、根拠のないものを確かだと思いこんだり、そういう時期ってあると思う。可愛く言えばサンタクロースを信じる幼気な少女だし、辛口で言えば近視眼的。そこにぱっくりと口を開けている奈落への入り口も見えない。でも、信じてみないと裏切られた時の痛みを知ることはないし、奈落の底に落ちてみないと希望も見えない。そういう経験は糧となり得る。活用するしない、糧にするしない、教訓とするしないは本人の自由である。
最後に透は成長し、ヒカルがいなくても生きていけるようになった。優しかった殻とのお別れの時である。ヒカルは透の成長にあたって必要不可欠であり、また、たった一人の親友でもあった。理解してくれ、味方になってくれた。そんなヒカルが消えてしまうのだ。透が一人で歩めるようになった時に、袂を分かつ。
本当に深く深く、視界の悪い海を潜るように自分の事を考えた。
海底に辿り着いた時、かつて分かれた自分が笑っていて欲しいと思う。
紙の本
虚構の世界の中であえぐ主人公を見た
2002/07/27 18:51
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:らふ - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公の透と透にしか見えないヒカル
2人は切っても切れない縁でありいつもヒカルなくしては生きていけない
透であったが、ヒカルと一緒にいる時、透は同級生のいじめにあったり
自殺現場にいたり父親の自殺があったり伝言ダイヤルで知り合った女性から
は欺かれる。
いわばヒカルの存在は、最後まで透を不幸に導く存在であったに違いない。
透がラストでヒカルと決別することになるが、これは悪運を断つことになる
だろうと僕は思った。
「梅雨が終わって夏が来るのかもしれない。空は再び昇ってくる太陽を
待っていた」という表現に透が自らの過去と決別し大人として成長する決意
が感じられた。
この作品から思春期を生きる主人公の闇と光を感じることができた。