紙の本
Vulnerability
2003/12/22 03:39
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:すなねずみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
僕は大学のころ、金子郁容先生に「統計学」を教わったことがある。「ヨージ・ヤマモトを颯爽と着こなし、夜毎アルファロメオを乗り回す」みたいなキャッチフレーズのついた「アメリカ帰りの軟派なインテリゲンチャ(?)」に憧れていた時代があったのだ、こんな僕にも。
もう絶版になってるのかもしれないけど、彼の書いた「空飛ぶフランスパン」という本(彼はフランスパン作りが趣味なのだ、それにアメフトも)を、それこそ憧れの先輩を遠目に見るように、ぽけーっと読み耽っていたりしたのだ(ん、日本語が変かな)。
そんなわけで若き日の僕の憧れの的であった金子先生なのであるが、最近は慶応の学校改革(幼稚舎だったかな?)を積極的に推進しておられるらしい。テレビ(ワイドショーっぽいニュース番組とか)でもときどきお見かけする。
「お元気でなによりです」
(って、そんな歳じゃないって、すいません)
で、この本である。ボランティアについての本といえば、たとえば「生の技法」なんていう本もいい本だなあと思ったけれど、やっぱり僕にとってはこの「ボランティア もうひとつの情報社会」が基本である。
<では、ボランティアはどうして、あえて自分をバルネラブルにするのか。それは、問題を自分から切り離さないことで「窓」が開かれ、頬に風が感じられ、第一章でお話ししたような意外な展開や、不思議な魅力のある関係性がプレゼントされることを、ボランティアは経験的に知っているからだ。>(p112)
僕はこの本で「Vulnerable」(「ひ弱い」「他からの攻撃を受けやすい」ないしは「傷つきやすい」状態を表す言葉で、名詞形は「Vulnerability」)という言葉と出会った。それは彼の本を通して知った松岡正剛さんの「Fragile」という言葉とともに、僕にとってとても大切な言葉、辛い日々を支えてくれる言葉になっている。
そして何よりこの本のすごいところは、こんな僕が身障者の介助をやってみようと思い、そして実際に行動に移してしまったりしたことである。「そんな個人的なことを」とか言わないでほしい。本当にすごいことだったんだから、僕にとっては。一人の人間を「行動」へと誘(いざな)ってくれる本なんて、そうそうあるもんじゃない。だから文句なく五つ星である。
彼はネットワーク論が専門で、そういう文脈で「ボランティア」を語り始めた最初の人(日本では)だと思う。昨今の<ボランティア=ネットワーク>みたいな言説って、内容空疎なことも多いように思うけれど、この本はゼッタイに違う。だから、是非、たくさんの人に読んでもらいたいと思う。
改めて読み返してみても、<勇気と希望が湧いてくる本>である。うん。
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コミュニティ・スクールをはじめ、地域社会の復興によって現状の問題解決を図ろうとする金子が、現在の活動をするに至った発端となった本。私は実は隠れた名著だと思うのだが、他の人はあまり同意してくれない。そんな本
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この筆者は本当にボランティアが分かっている人です。
詳しくは→
http://echoo.yubitoma.or.jp/weblog/hiroasakawajp/eid/482502/
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「ボランティア」と「情報」という、一見すると何の関連性もない言葉を、先見性のある深い洞察で見事に結びつけており、非常に興味深い。上記で「先見性」と述べたが、本書が書かれたのが情報化社会が到来する以前の92年であることを考えると、そう表現するのが適切であると思う。
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高2の冬、区の国際協力の派遣でタイへ行く前に読んだ1冊。ボランティアにおける自発性パラドックスと傷つきやすさについて学び、自分に出来ることは何かを真剣に考えるきっかけになった本。ボランティアという定義の幅広さに驚き、誰かのためにではなく自分のために出来ることからやればいい―この本からは謙虚さも学べました。
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今日提出したレポートのために読んだ本だったけど結構面白かった。今までに読んだほんの中で一番俯瞰して書いてた気がする。
ボランティアの捉え方も思っていてもこんな風にほんとうにできるのかという疑問はあった。でも、実践している人達がそういう風に言ってるんだからそうなんだろうな。
ボランティアはしてあげるものじゃないんだよ。だって、こっちも勉強になっているんだから。
相互依存性のタペストリーでこの世界は成り立っているんです。
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ボランティアを「動的情報を得るための活動」と捉え、著者が専門とするネットワーク論の側面から理論的に、著者のボランティア体験から実践的に論じた本。ボランティア活動に参加してみたいがツテや知識がなく勇気が出ないという人も、気持ちを軽くして扉をノックする気になれるのではないだろうか。逆に、ボランティア活動を通して社会貢献したいという意気込みの強い人は期待が外れるかも。(2008-08-24読了)
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良本。具体例とメッセージがしっかり編成されている。
途中、介護の話で中だるみしてしまい、読むスピードが落ちてしまったのが嘆かわしいが、
著者の意見は強い裏づけの元、しっかりと主張されているのですばらしいと思う。星4つ。
もっとも大事なセンテンスを抜粋します。
「ボランティアの発見する価値は、経済性という価値観の平面には収まりきらないもの〜中略〜
ボランティアは特殊なものではなく、社会生活や人間本来の行動の一部であるのだから、経済システムとも「きちんとした」関係を結びつつ、共存することができるはずだし、相することが必要である。
すばらしい内容です。
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ボランティアとは?という投げかけから徐々に徐々に社会学についての論評に移行して深く勉強できた。
資本主義という切り取られた平面から論じていなかったところがよかった。
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タイトルは「ボランティア」だが、サブタイトルにあるように情報社会について多く書かれている。
事例が多く書かれており読みやすい一冊。
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著者はボランティアに参加する傍ら、ネットワーク論の教授である。いや逆か?教授でありながら、ボランティアに参加している。
ボランティアが自発的なものであることは言うまでもないが、自発性に委ねられるがゆえに、”周囲から守られないことがある”というのは直感的に理解できるだろうか。ボランティアをやってはじめて気付く、その活動の限界、自分の限界、周囲の目。それによって、「ボランティアをやってみよう」と志を抱いたときとは異なる、さまざまな感情が呼び起こされることがある。
その問題意識から、本書は情報ネットワークとの類似性について語っていくのだが、僕にはよく分からなかったなあ。しかし、情報ネットワークで情報を与えるのも、ボランティアも、共に自発的な行動であって、見返りは期待しないのだが、「そこに得るものがある」から、次の価値が生まれてくる、というところは「なるほど」と思った。
それが直結しているのはWIKIだろう。本書の初版は92年なので、まだWIKIは存在しなかったと思うが、それゆえにこの本の論点は面白いと言える。
ここからは僕が適当にめぐらせた思考になるが、ボランティアをすることで得るもの、知り合う人、感じること、次にやろうと思うこと、などはみんな価値が計れない。価値が計れないものはお金で手に入りにくいから、本当は価値がある。ただ、意味づけが難しいし、その意味が分かるのはどのくらい先になるかが分からない。
そうした不安と、今やるべきことの優先順位が、均衡しないとなかなかボランティアに踏み込めない。
しかし、ボランティアを行っている瞬間って、価値や意味がすぐには分からないからこそ、ゆたかな時間だとは言えないだろうか。そうした時間が持てるくらいの心のゆとりを持ち続けたいものである。どんなに小さなことでも、無理せずにできる範囲で…。
僕のブログより:http://d.hatena.ne.jp/ninja_hattorikun/20091114
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著者は、慶応SFC・金子郁容・大学院政策メディア研究科教授。私のゼミの教授でした。
92年に発売された当時は、一橋大学商学部の教授でした。
ちなみに、金子先生が日本にボランティアという概念を持ち込んだとのこと。友人に聞いて知りました。
この本は、ボランティアを通じた様々なエピソードから始まり、
中盤から現代社会に特徴的な複雑な構造を理論ベースから落としてボランティアを詳説すると同時に、金子先生の専門でもあるネットワーク論をベースとしたボランティアを通じた、ボランティアから広がるネットワークについての詳説。ボランティアの「弱さの強さ」、つまり、「自分の直観、論理、経験などに基づいて、自分で判断して、自分から動くことによって、また切実さをもって相手や事態にかかわることによって、逆に相手から力をもらう可能性があること、さらには新たなネットワークの構築の可能性を秘めていること」に関してを情報をキーワ—ドに詳説。それから、ボランティアと報酬についてなどが書かれている。
この本読むまでは、ボランティアって単なる偽善的なイメージしかなかった。
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ボランティアにおける人との関わり方の精神性について主に論じていた。
個人的には久々に感銘をうけた。
ボランティアは資本主義から離れた根源的な人間関係を作るという。
それはしてあげている、してもらっているという関係性でなく、他者の問題を自分の問題として感じるということである。
この本では、合理的に構築された巨大システムに属する人間は個別に役割をあてられ、実際は関係したいるのに、個人は引き離されてしまったと論じている。
そして次第に他人の事は自分には関係ないというスタンスが出来上っていかおそれがある。
昔からそういったところのあった私には強烈な本だった。何かにつけて当事者性というのがなかった。
性格や容姿、能力の如何よりも、そういった精神性が人を孤独に追いやるのだと思う。
この本を読んで、資本主義から離れた、自分の気持ちや他人との関係について、深く考えていきたいと思った。
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[ 内容 ]
情報洪水のなかで、多くの人が無力感や焦燥感に包まれている現代社会。
ボランティアは、それを変えるための「手掛かり」になるのではないか。
献身や慈善といった旧来のイメージを超え、誰もが気負うことなく参加できるボランティアとは?
企業の社会貢献はなぜ必要か。
ネットワーク論の旗手が新しいうねりを紹介し、その意義を考える。
[ 目次 ]
第1章 ボランティアの楽しさ―不思議な関係と意外な展開(七六歳にして「現役」のボランティア 青梅の小学校とフィラデルフィアの街角から ほか)
第2章 ボランティアのかかわり方(分断された社会と巨大システムの鉄の檻
相互依存性のタペストリー ほか)
第3章 つながりをつけるネットワーク・プロセス(ふさわしい場所を空けておく ボランティア・イン・スピリット ほか)
第4章 本来的で豊かな関係性(「お金に換算しない」価値 尊厳ある対等な関係 ほか)
第5章 もうひとつの情報社会(情報の提示する新しい価値観 企業の社会貢献活動はなぜ必要か ほか)
[ POP ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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20年前に書かれたとは思えない慧眼。資本主義の欠点を鋭く指摘した「功利的理性批判」も、結論は「贈与論」に丸投げで結局具体的な施策を示さなかったのに対し、こちらは「ボランティア」という切り口から資本主義の欠点を補完できる可能性を示している。