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「そこを訪ねる人にとっては、
われわれもまた
「輝ける嘘」の一部だったのだ。」
第二次世界大戦で戦場となったヨーロッパを尻目に、アメリカは戦後唯一の
超大国になった。そのアメリカの「輝ける嘘」は、ヴェトナム戦争の前哨戦と
もいえる朝鮮戦争から始まっていた。
朝鮮戦争もヴェトナム戦争も、アメリカにとっては民主主義vs共産主義の
イデオロギーの戦いだった。しかし、戦場となった国の人たちにとっては
自分たちの民族の為の戦いであることを、この超大国は理解出来しよう
としなったところに悲劇があるのではないか。
腐敗したサイゴン政府ではクーデターが起こり、3年で終結させるはず
だった戦争には次々と大量のアメリカ兵の補充が行われる。そして、
殲滅作戦に成功しているはずなのにヴェトコンは一向に勢力の衰え
を見せない。
ヒーローを夢見たアメリカ人将校がいた。アメリカの勝利の為に尽くそう
とした将校は、ヴェトナムの現実をありのままに報告し軍上層部から
疎んじられ退役し、後に文民として再度ヴェトナムの地を踏む。
イアドランの戦い、テト攻勢、北爆。引くに引けなくなったアメリカ軍の
姿がそこにはあった。しかし、それでも彼はアメリカはこの戦争に勝つ
と信じた。恐らく乗ったヘリコプターが墜落し、地上に叩き付けられる
その瞬間まで。
16年の歳月を費やして書かれた長大なヴェトナム戦争の真実である。
ハルバースタム『ベスト&ブライテスト』と併せて読むと、全体像が
掴み易いかも。
輝ける嘘はヴェトナム戦争だけではなかった。ソマリアで、イラクで、
アフガンで。アメリカの輝ける嘘は、今も継続中である。