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1992年刊行。
フランス革命の基礎理念たる人権宣言。しかし、当のフランスはその理念に反し、直後の第一共和制からナポレオン帝政等、権力帰属の様相は、帝政・共和制間で大きく振り子が振れるという現実の下にあった。この理念と現実の乖離を前提にしつつも、一方で仏革命の理念が世界各地に浸透していったのも事実である。本書はその仏革命の影響を地域毎に分別して検討していく。
簡潔に整理すると、
① 仏革命と露革命との間で理念の優劣評価が揺れた中国。
② 革命を権力転覆の所業と見、人権宣言の基底にある立憲主義の可及的流入回避を図った日本(大日本帝国憲法)。
③ 政治的にも軍事的にも仏と独に近すぎたため、理念とは程遠い現実に敗れたポーランド。
④ 英仏の植民地政策の相克に翻弄されたインドと中東、中でも革命を権力転覆と見たペルシア。
⑤ 時代を先取り過ぎた理念に惑悶した南米諸国。
と要約できそうだ。
編著者田中治男は成蹊大学法学部教授(序)、
同木村雅昭は京都大学法学部教授(印)、
同鈴木薫は東京大学東洋文化研究所教授(オスマン帝国)。
著者早坂真理は茨城大学教養学部助教授(波)。
同八尾師誠は東京外国語大学外国語学部助教授(イラン)。
同佐藤慎一は東京大学文学部助教授(中)。
同宮村治雄は東京都立大学法学部教授(日)。