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平和の代償 みんなのレビュー

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紙の本

菅直人総理が首相就任演説で本書に言及したので、30年ぶりに本書を書庫から取り出し再読してみた。あの当時において、ここまで骨太な議論を展開して左翼に毒された日本の言論を正すべく啓蒙活動に邁進された永井教授の勇気とエネルギーに改めて敬意を覚えると同時に、現役で法学部に入学した直後、わずか19歳で本書を読破した私は、つくづく偉大な青年だったんだなあ(栴檀は双葉より芳し!)との思いを強くする(笑。

2010/07/30 18:20

7人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:かぬひもと - この投稿者のレビュー一覧を見る

本書を最初に買ったのは、今から30年前の昭和59年1月17日。私が大学一年の時である。当時はまだまだサヨクの影響力が強く、非武装中立を掲げる日本社会党が最大与党として国会で偉そうにしていた。岩波の腐れ雑誌「世界」に蟠踞する「進歩的ガクシャ(丸山真男、都留重人、鶴見俊輔、小田実、坂本義和、関寛治ら)」が垂れ流す腐れ政治論に飽き足らない中央公論社の高梨茂、粕谷一希が、図に乗って調子こいてる「岩波文化人」に天誅を加えるべく発掘しぶつけたのが、本書の著者永井陽之助ら現実主義者の学者群である(他の私が敬愛してやまない高坂正堯京都大学教授、中島嶺雄東京外語大学教授、神谷不二慶応大学教授、入江昭シカゴ大学教授らがいた)。

本書の奥付を見ると昭和42年1月初版で、私が購入したのは昭和51年2月の第19版となっている。初版から10年以上の命を保って、かつ19版。この手の硬派な書籍にしては異例の人気を博した本と言い切って良いのではないか。調子こいたド左翼が垂れ流す反米音頭に飽き足らない「心ある知識人8これには当然私も含まれる」」が当時から結構いたことがこれで証明される。

本書は中央公論誌上に発表された三本の論文「米国の戦争観と毛沢東の挑戦」「日本外交における選択と拘束」「国家目標としての安全と独立」をまとめて掲載したものである。最後の論文は、ド左翼が蟠踞していた日本の論壇を、その根底から揺さぶった2本の論文に対し「政治的蓄膿症」なド左翼学者が寄せた「反論」を、それこそナイフでバターを切るようにスパスパと切って見せる再反論論であり、前二者とは、やや趣を異にする。

本書のタイトル「平和の代償」について永井教授は「この世で美しいもの、価値あるものも、何らの代償なしには何ものも得られないという素朴な日常的英知の再確認にほかならない」とあとがきに書いている。日本には、ド左翼を中心に、いまだに「国家ぶら下がり健康法」を決め込む無責任な輩が多い。寺島実郎は「ベルリンの壁崩壊による冷戦の終了で、その存在意義を完全に失ったにも関わらず、いまだに日米安全保障条約にしがみつく安保屋たちの放つ腐臭には耐えがたいものがある」などと言って、軍事力を急速に増強し、アジアにおいてその露骨な政治的軍事的野心を隠そうともしない中国の存在を完全に黙殺した間違った分析を前提に、日本の安全保障政策の柱石足る日米軍事同盟を、その根底から揺さぶろうとしたことは記憶に新しい。この手の日本を取り巻く現実を無視した空理空論を論破し、リアルな外交政策を打ち立てるべしというのが永井教授が放ったメッセージなのである。

本書にはいま読み返しても「鋭い!」と思わずにはいられない数々の論考がある。例えば、

「一国の外交政策は、その国民の多年にわたる社会生活、国内の政治的経験の投射である」
「日本は、現在なお、半主権国家であり、国際社会における意思決定の完全な主体(独立国)とはなっていない」

毛沢東の世界革命路線の行き詰まりを分析した論考も鋭い。
「(毛沢東中国の世界戦略は、世界の先進国と後進国の所得格差が増大することを見越し)その落差から生じるエネルギーに、世界革命の源泉を求めている」「しかし、後進地域もやがては経済的に発展し、経済的政治的安定を求めるようになる。こうなると政治的経済的混乱を志向する毛沢東の戦略は、行き詰らざるをえない」「国際共産主義運動は、国境を越えたインターナショナルな階級愛と大衆運動で結ばれることを欲している。しかし、毛沢東の世界戦略は、インターナショナリズムではなく土着の(中華)民族主義を基礎に置いている。この毛沢東の中華民族至上主義そのものが、中国の世界革命の最大の障害になる」「なぜなら周辺のアジア人は中国からの革命の輸出は、中国によるアジア支配の恐怖に直結するからである」「中国は、米帝国主義を世界民族共通の敵に祭り上げようとしたが、毛沢東が鼓舞する中華民族主義は、周辺国をして中国自身に対する警戒と憎悪を掻き立てざるをえない」東南アジア諸国連合は、反中華主義と中国による東南アジア共産化の試みを阻止することを目的に作られたし、中国によるインドネシア政府転覆の試みは9.30事件という激烈な中国人皆殺し事件という形で報復され、その後マレーシアではブミプトラ政策という名の中国人経済権益剥奪政策として結実した。

米国に対する論考も面白い。「日米の友好関係は、英米関係ほど自明でもなければ、なんらの相互努力なしに達成しうるものでもない」「日本人の対米依存は、ほとんど無意識の世界にまで達していて、それが時々一種の反抗心を激発するらしいのだが、どうせ米国は日本を見捨てはしないとか、米国に対してはごねるほど得だという安心感の上にアグラをかいて、国家間の関係が冷たい利害打算のうえに成立しているギブ・アンド・テイクの関係であることを忘れている人が保守・革新問わず日本には意外と多い」「大東亜戦争に何らかの意義があったとすれば、それは太平洋という海洋を挟んで相対峙した二大海軍国が、心から手を取り合うために支払わねばならなかった巨大な代償であったという点に求められる」「われわれが常に留意しなければならない国防と外交の第一原理は、アメリカを敵に回してはならないということである。この根本原理を忘れるならば、あの太平洋で散った英霊の死は、それこそ犬死になる」「強大な海軍力を誇るアメリカこそ、日本にとっての最大の脅威であり、これを敵に回したとき、日本は最もダメージを受ける。これを妄想と笑う人は、米帝国主義などと、口先でいうだけで、心の底から米国に依存し、安心しきっているお人好しであることを自ら暴露している」

どうです。ずしんと臓腑に沁みわたるでしょう。そして非武装中立論を掲げる日本社会党をあざ笑うかのように「現在の革新陣営における基本的なディレンマは、日本国民の中にある戦争に巻き込まれたくないという孤立主義的なムードと、自己の犠牲や努力で自国を防衛することを厭うムードの間にある矛盾をついに解決していないことである」と断定している。本書が描かれてから30年後の1997年、村山富市首相は自衛隊合憲論に舵を切り、クサレ政党日本社会党は解体の憂き目にあったのである。

最後の極めつけはこれだ。「正義より平和を上位の価値にすえざるをえない深刻な苦悶を味わっていない平和主義者は、いまなお平和より正義を上位の価値におく素朴な革命主義者とともに、真に20世紀を生きる人間ではなにのである」

本書を沖縄の反米主義者にこそ、読ませたい。

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