紙の本
贋作を見破る参考書その2
2001/02/21 17:10
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちゃうちゃう - この投稿者のレビュー一覧を見る
美術館学芸員クリス.ノーグレンの第二弾。今回の舞台はイタリアそして登場する名画は北方画家。と言っても有名どころが名を効かせている日本ではあまりなじみのない画家達ばかりかもしれない。もちろん私も、出てくる名前を聞いてもさっぱり作品が思い浮かばないのだが、それでも十分おもしろい。
だいたい、このシリーズでは物語の初期の頃に「真作」か「贋作」かを見極めるシーンが登場する。今回はまずルーベンスとファン.アイク。作風からよりその描かれている画板から偽者か本物かを割り出すシーンは相変わらず、われわれしろうとにもわかりやすい。将来本物の絵画を購入しようとする場合に、役に立ちそうだ。
事件はそもそもイタリアで起こる。一晩の間にボローニャの美術館、絵画コレクターそして絵画の修復画廊の3件から盗み出された名画が、なぜかシアトルの複製画専門店の倉庫から発見される。何故、そこの倉庫に絵があるのか?倉庫の持ち主が犯人なのか?
主人公クリスの相変わらずの美術バカぶり(失礼)には、思わず苦笑してしまう。魅力的なイタリア料理や古い町並みの描写。まるでちょっとしたイタリア旅行に行ったような気にさせてくれる作品である。
投稿元:
レビューを見る
シリーズ第2弾。あらら、アンとは不穏な感じで始まるのね。相変わらず、どこか情けないクリス・ノーグレン。
でもお仕事ではさすがプロ。見て”わかる”というのは、どこまで経験と学びを積んだんだろう。この分だと、探偵としても経験を積んでしまいそうだが。
イタリアの空気が伝わってくるような描写も良かったな。
投稿元:
レビューを見る
クリス・ノーグレンシリーズの第2弾。
イタリアで2年前に盗まれたルーベンスの名画を、アメリカの複製が輸入会社の倉庫で偶然発見したことからクリスが巻き込まれる物語。
これを読めば、いかにイタリアで名画の盗難事件が多いのかということがわかる。
クリスの上司、美術館館長は「マフィアなんて過去の話さ」というが、実際にイタリアに飛んだクリスは、いたるところでマフィアの影を感じる。
盗難事件の真実を警察に通報するのだといきまいていた、クリスの友人のマックスが何者かに襲われて両足を粉々にされたり、シチリアの友人ウーゴをたずねた先のレストランで、我先にとレストランにいたマフィアの男に自分のテーブルにある食べ物を持っていく人々をみたり。
マフィアの描写はともかく、イタリアの美しい風景、名画のその名画たる理由、絵画を愛する人々の描写など、相変わらず丁寧でそして「人」が好きなのだと感じられるエルキンズの作品。
前作で離婚調停の泥沼のさなかにいたクリスだが、前作ベルリンでアメリカ空軍大尉のアン・グリーンと出会い、妻の申し出をすべて受け入れて離婚している。
今作ではアンとの仲の進行ぶりも見受けられる。
投稿元:
レビューを見る
美術学芸員クリス・ノーグレンシリーズ2作目。前作は贋作事件に携わったクリスだが、本作では美術便盗難事件解決に関わることに。
今回の舞台はイタリア。いやあ、仕事とはいえ、風光明媚な土地を訪れることが出来るのは役得以外何物でもなく、全くうらやましい限り。
そして今回も盗難品であったルーベンスの名画を皮切りにルノアール、ヴァン・ダイク、テルブルッヘン、カラヴァッジオ、ウィテバールにフラゴナールと盛りだくさん(ちなみに題名はフラゴナールの作品について登場人物の1人が語る感想から来ている)。このように名前を陳列してもどの作品がどの作者の物であるのかが一致しない浅薄な知識しか持ち合わせていない私。絵画の本と一緒に読むとさらに楽しめるんだろうなぁ。
今回は美術の薀蓄もさることながら、ヨーロッパ随一の「マフィア社会」と呼ばれるイタリアの慣習、料理、風景がたくさん織り込まれ、クリスたち登場人物を魅了する。何しろ登場人物の1人はイタリアに渡ってイタリア風に名前を変えるほどののめり込みようだ。しかしクリスは盗難事件の解決に携わるという仕事のため、否応無くマフィアに関わりを持たざるを得なく、なんと友人だけでなく本人も暴行に遭って入院する羽目に陥る。
そして前作から引き続いて妻と離婚調停中であったクリスに新しい恋の始まりが訪れるところで物語は終える。この辺の進展もシリーズ物の長所といえるだろう。そういえばギデオン・オリヴァーシリーズも2作目でジュリーを出逢うだったんだよなぁ。
事件そのものよりもこの小説としての皮の部分が非常に面白いのがエルキンズの特徴だが、特にヨーロッパ好き、美術好きには本作は堪らないシリーズだ。