柳生刑部秘剣行 みんなのレビュー

2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者：kokusuda　-　この投稿者のレビュー一覧を見る

大筋は正統派な時代劇小説ですが、菊地シショーが書くので、
設定や小道具、登場人物は魔界でも通用しそうです（笑

徳川三代将軍・家光の治世—
兵法指南役である柳生一族は、幕府の隠密でもあった。
剣技では兄・十兵衛を凌ぐといわれる柳生刑部に、異形の闇軍団が襲いかかる。
死闘の連続。
闇軍団を操り将軍家転覆を謀る秘策が明らかとなったとき、
白刃一閃、黒幕に斬り込んでいく刑部！
「…その刃で一刀両断された読者は、もはや、
めくるめく菊地ワールドから逃れられなくなる」
（解説文より）
渾身の時代伝奇小説！
（６刷文庫カバー解説より）

３０年ほど前に関西に住んでいた時、知人に柳生正木坂道場の方がいました。
何度か、その実力を拝見し、道場も見学させていただきました。
しかし、私を一番魅了したのは武術としてよりも、
謎の剣豪たちを輩出した柳生新陰流の歴史でした。
奈良から柳生へ至る柳生街道への取材は日常となり、
実際に「石破の太刀」「首切り地蔵」などの古跡や故事来歴を
地元の方に聞いて回った思い出は、今も私の中で大きな財産になっています。

この作品では、いろいろなＳＦ的アイデアが登場します。
時代劇に出して大丈夫？という物も多々あります。
しかし、さすが菊地シショー。
時代劇が本来持っている荒唐無稽さに見事にハマッテます。
構成は柳生刑部を主人公にした連作短編です。

この時代の柳生家は戦国時代直後ということもあり、謎の多い歴史になっています。
中興の祖である石舟斎。
その息子、但馬守宗矩。
孫たち、十兵衛三厳、刑部友矩、飛騨守宗冬。
彼らの記録は有名な割りにほとんど残っていません。
時代劇作家の多くが彼らを主人公にしているのも納得できるアヤシさです（笑